出身は仙台。高校時代はダンスに明け暮れて、卒業後はダンスの専門学校に行くつもり、だったのだけど。
「ダンスが好きすぎて、ある時突然、これを仕事にしたら途端に、ダンスが嫌いになりそうな予感がしたんです。なんか、怒られながらダンス踊りたくないなって。だから違うことで表現者になりたいと思って、じゃあ何がいいのかなって」
 迷っている最中、友達が見せてくれたのが、『エヴァンゲリオン』だった。
「マンガにもアニメにも全然興味なかったけど、試しに第1巻を読んだらすごくハマっちゃって。アニメも見て、綾波レイの声に惚れたんです。林原めぐみさんという声優さんでした。これはもう、私も声優になりたい、ってすぐに思いました。それで、声優の専門学校に行くことにしたんです」
 そして2年後、東京の声優事務所へ。
「でも、駆け出しで仕事をもらえるような簡単な業界でもないので、どうにか東京生活をやりくりしないといけない。とにかくバイトしようと思って、人から紹介されたのが、秋葉原にある雀荘でした」
 それまで麻雀なんて、まったく知らなかったのだけれど。
「オジサンたちが打ってるのを見て、けっこう面白そうかもしれない、と思いました。〝やってみる?〟って言われたから、〝じゃあやってみます〟って。で、結局、その次の日から2年間、私はズブズブに麻雀漬けになったんです。
 最初は打ってる人たちの後ろから見て覚えて、寝ても醒めてもそのことばかり考えていて、声優の事務所に連絡するのも放置して、毎日麻雀打っていました。3ヶ月後にはけっこうバシバシ打てるようになりましたね」
 どんなゲームもそうだけど、遊び方にはその人間の性格が出る。さらに麻雀には、人生の教えも詰まっている。
「麻雀には、絶対に波があるんです。ついているときは何もしなくてもいい手が作れるし、めちゃめちゃアガリが来たり、絶好調なんですけど、その時期が過ぎると全然アガれなくなる。良い時期と悪い時期は交互にくるし、大きな波も小さな波もあるし、それに逆らうことはできないんです。
その雀荘はポイント制で、常連の人の成績を毎日記録するのも私の仕事だったんですけど、1年くらい経ったころ、そのことに気付きました。どんなにうまいオジサンだって、凹む時期はある。今ツイていなくても、しばらく待っていれば、必ず次のツキが待っている。だから今は自分のタイミングだなと思ったら、強気で攻めるべきだけど、今は相手のタイミングだなと思ったら、とりあえず待つことが大事なんです。
 それって、人生も同じですよね。麻雀は人生の縮図だって、常連のオジサンたちもよく言っていました。自分でもそうだなって思います」
 こうなったらいっそ、麻雀のプロになろうか。そんなことを考えていたちょうどその時、次の扉が待っていた。