「雀荘のお客さんから、『俺ちょっとダーツの大会に出るから、応援しに来てよ』って言われたんです。見に行ったら、めちゃめちゃ楽しそうで。その大会にはゲストでプロの方が何人も来ていて、その人たちのプレイがまたカッコ良かった。見ている一般の人たちを、〝わーっ！〟とか〝うぉーっ！〟とか〝すげぇ！〟とか沸かせているのを見ていたら、自分もやってみたい、と思いました。ダーツそのものよりも、ダーツのプロになりたいって思ったんです。で、翌週すぐに雀荘を辞めて、すぐにダーツバーで働くことにしました」
　せっかく２年間、麻雀に打ち込んでいたのに。
　変わり身、早っ！　でも情熱は、本物だ。
「そのダーツバーの先輩が、しこたましごいてくれました。私は私で負けず嫌いなので、半年くらい、投げて投げて投げて。仕事が始まる５時間くらい前に店に入って、とにかくひたすら練習しました。ちょうどその頃プロテストがあって、まさか受かるとは思っていなかったけど、やる気をアピールしようと思って受けたんです。するとうっかり、受かっちゃったんですよね」
　まさかのプロの誕生に、まわりも本人もビックリした。
「でもその時点で、先輩たちにはプロになることを反対されました。今の実力でプロになったら、試合でボコボコにされる。世間からも、あれがプロか、と冷たい目で見られる。やめておけって。でも私は、受かったのがうれしかったし、ボコボコにされているうちにうまくなる、っていうパターンもあるかもしれないじゃん、と思って、そのままプロとして登録しました。その年から開幕戦に出て、案の定、ボコボコにされましたけどね（笑）」