1 鉛筆で描く日本画
佐藤裕一郎
- Magazine ID: 3850
- Posted: 2019.04.01
そこには確実に、ひとつの異世界が存在していた。描かれているのは湖を背景に立つ、3本の白樺の古木。絵画なのに、静謐さと厳しい冷気が伝わってくる。鑑賞する者が樹木から読み取るのは生命力、それとも祈りだろうか。砂時計の砂が滑り落ちるように、さらさらと、画面の向こう側で時が流れている。
描いたのは佐藤裕一郎。絵のタイトルは『koivumaisema』(コイブマイゼマ)、フィンランド語で〝白樺の風景〟という言葉だという。
「0.5ミリのシャープペンと鉛筆で描きました。人がなにか絵を描こうとするとき、最初に手に取るのは鉛筆ですよね。何の抵抗もなく、素直に描ける。そういうところから始めよう、と思ったんです。絵の具を使うといろいろ、技法がどうとか、いろんなことを考えてしまうから。もっとシンプルに、そのまま描こう、描きたいと思って、それがどんどん大きくなって、こんな巨大な作品になりました。この作品は、構図を決めたり準備するのに2ヶ月、描き始めてから4ヶ月かかっています。1日14時間描き続けても、20センチ四方くらい進めばいいくらい。少しずつ少しずつ、積み重ねるように描きました」
今週のYEOは、この絵を描いた画家・佐藤裕一郎さんが主人公。物腰が柔らかくて、ちょっとシャイで、芸術のことなんてあまりよく知らないインタビュアーにも一生懸命答えてくれる。そこで図に乗って聞いてみたいろいろなことを、写真とともに月曜日から金曜日まで連日更新。この3本の白樺は、いったいどこにあるのだろう?
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出演 :佐藤裕一郎 さとう ゆういちろう
1979年山形県生まれ。2005年東北芸術工科大学大学院日本画研究領域修了。第3回トリエンナーレ豊橋星野眞吾賞展優秀賞。以後、日本各地で個展を開いてきた。2016年文化庁新進芸術家海外研修員としてフィンランド・ユヴァスキュラに滞在。研修期間を終えた後もフィンランド・ラウカーに在住し、精力的に創作活動中。フィンランド国内で個展を開いている。
ホームページ https://www.yuichirosato.net/
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取材/文:岡本麻佑
国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。
撮影:萩庭桂太
1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
http://keitahaginiwa.com/