型にはまらぬテノール歌手、落語家でもあり、社会貢献までしているとは！
　好感度がめいっぱい上がったところで、最後にひとつ、ネガティブ情報を付け加えなければならない。実は昨年10月から橋本恵史は活動を休止、３ヶ月間、謹慎していた。道路交通法違反、運転免許停止中に自家用車を運転し、免許の失効と罰金刑を受けたのだ。
「大反省です。深い深い落とし穴を自分で掘って、自分で落ちてしまいました。いろいろなことがうまくいっていたので、正直、たぶん、調子に乗っていたのだと思います。今思えば、いろんなことが謙虚ではなかった」
　当然のことながら、仕事の上でも大きなマイナスになった。
「良い仕事や大きい仕事をいただいていたのに、それがすべて消えました。こんなに悔しい思いをしたのは初めてです。もちろん自分が降板した現場には足を運んで、裏方を手伝わせていただきました。自分が出るはずだった舞台を客席の後ろから見るのは、締め付けられる思いで、この気持ちはたぶん、忘れません。起こしてしまったことは取り返しがつかないので、この先いつか〝あれがあったから恵史は今、こんなに良くなった〟と言っていただけるようにしたい。この経験を、そのためのエネルギーにしようと思います」
　まだまだ先のことになるけれど、この経験はいつか必ず、彼の人生のネタになるはず。
「テノール歌手としては、脂が乗るのは40代と言われているので、これからです。ずっと勉強しつづけたいと思います。僕は今までいろんなことやってきて、いろいろ諦めてきましたけど、歌だけは諦めたくないんですよ。もっとうまくなりたいし、もっとなんでも歌えるようになりたい。落語も、ずっとずっと、勉強だと思っています。落語だけじゃなく、フリートークをもっと磨いて、いつも、いつでも面白いと言われるようになりたいです」
　書き切れなかったけど、橋本恵史はオペラの演出もするし、ダンス公演の演出もするし、さらにはオペラ台本作家という肩書まで持っている。この先もきっと、活動範囲はますます広がっていくはず。
「できること全部やって、その結果、職業・橋本恵史になればいい。そう思っています」