さて5日目の今日は、藤舎貴生の個人的な趣味のお話を。
 実は深夜、24時間営業のファミリーレストランでチョコレートパフェを食べている姿を、しばしば目撃されているとか。
「あ、それ、気分転換です。曲を作っていて行き詰まると、寝るか、気分転換か、どちらかでしょう。甘いもの好きなので、酒も飲めないのでね、頭をリセットしに行くんです。京都にいるときは、宝ヶ池までドライブすることもあります。夜中の12時とかに池のほとりにポツンと座るとね、だれもいない。シーンとしてます」
 京都の夜、あやかしでも出そうな。
「鹿はでます。そのへんをばーっと走っていたりします。目を光らせてね(笑)」
 そういえば、藤舎貴生は馬が走るのを見るのも、大好き。かなり熱い、競馬ファンだ。
「大井競馬場にはちょこちょこ行きます。理想的には、月に一度は行きたい(笑)。スマートな中央競馬もいいんですが、僕は地方競馬のほうが好きです。大井のね、中途半端に近代化したいけどしきれなかった、怪しげな雰囲気が好きなんです。ローカルが頑張ってます、みたいな、昭和の匂いがまだ残っている風情が、たまらない」
 チョコレートパフェを食べ、馬券を買いながら、これからも藤舎貴生は笛を吹く。
 ハーメルンの笛吹き男みたいに、笛を吹く男は人々を魅了し、どこかへ連れて行ってしまう力を秘めているのだ、きっと。
「笛だけ吹いてれば良いのに他にもいろいろやるものだから、出る杭は打たれます。でも、出過ぎた杭は打たれない。打たれている間はまだダメなんじゃないかと思います。打ちたくても打てなくなる、諦めてくれたら、こっちのものだと思ってます」

  • 出演 :藤舎貴生  とうしゃ きしょう

    1970年生まれ。京都市出身。東京藝術大学卒業。歌舞伎音楽、日本舞踊の横笛(能管、篠笛)の演奏家。古典音楽のみならず林英哲、DJ KENTARO、村治佳織らとの共演も果たす。EXILE USA、黒田征太郎、武田双雲など異種アーティストとのコラボも多い。作曲家としてCM音楽、東京コレクションでの音楽も担当。またプロデューサーとして『未来創伝』などの公演を企画、CD『幸魂奇魂』は第54回日本レコード大賞企画賞を受賞している。

  • 【公演情報】
    『有頂天會』
    2018年12月15日(土)一部 11時開演/二部15時30分開演 
    京都先斗町歌舞練場にて。
    特別出演 松本幸四郎・尾上菊之丞
    問い合わせ https://tosya-kisho.com/

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/