#2 バラバラだったものが一つに
阿佐ヶ谷スパイダース
- Magazine ID: 3761
- Posted: 2018.08.14
劇団化、というのが演劇に頓着のない私にはどういうことやらハッキリとしないのだけれど、
バラバラだったものが一つに集まったということなのだろう。
俳優だけでなく音響や美術、ヘアメイク、照明のデザイナーなど様々なスタッフも名を連ねている。
老舗の文学座や俳優座でもない限りこれほどスタッフのいるような劇団は耳にしない。
素人の私が知らないだけなのだろうか。
そこで何やらいかつい風体の、明らかに日焼けした肌にバランス良く筋肉がついている、
俳優ではないだろうという御仁に話しかけてみる。
「あなたは俳優ではないですね?」「大道具ですね」「大道具?大道具の方が劇団に?」
「面白いですよね」「いやまあ面白いけれども、それであなたは劇団でどういうことを?」
「ま、大道具ですね。あとは見てます。新人オーディションの選考にもいたんでね、
とにかくやっぱ見たいですからね、見られるときは」
どうも私の理解の範疇を超えているような気がする。
大道具さんがオーディションで俳優選考に参加するということはどういうことなのだ?
聞けばあちらの白髪の老紳士、照明デザイナーのあの方もオーディションには出席したそうだ。
相変わらず子供が駆け回り、犬も吠えてしまうこの稽古場で、果たして長塚くんは統率が取れているのだろうか。
しかし長塚くんは相変わらず真剣な眼差しで稽古に没頭しているゆえ、私はプロデューサーを探すことにする。
きっと作品作りにはプロデューサーがいるはずで出なければ曲がりなりにも公演は立ち行かない。
ところがこれがどうもハッキリとは見つからないのだ!
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出演 :阿佐ヶ谷スパイダース あさがやすぱいだーす
1996年、長塚圭史と伊達暁を中心に〈演劇プロデュース・ユニット〉として結成、「アジャピー・ト・オジョパ」にて旗揚げ。1998年より中山祐一朗が参加。2004年、長塚が第15回公演「はたらくおとこ」の作・演出にて第4回朝日舞台芸術賞などを受賞。2016年までに全25作品を上演。2017年5月、旧知の仲間がメンバーとして加入し、‹劇団〉化。2018年、オーディションを経た新メンバー加入。同年8月「MAKOTO」上演。
公式ホームページ・http://asagayaspiders.com/
【公演情報】 阿佐ヶ谷スパイダース「MAKOTO」
作・演出:長塚圭史 出演:中村まこと、大久保祥太郎、木村美月、坂本慶介、志甫真弓子、伊達暁、ちすん、長塚圭史、中山祐一朗、藤間爽子、森一生、李千鶴東京公演:2018年8月9日(木)~20日(月)吉祥寺シアター 大阪公演:2018年8月25日(土)・26日(日)近鉄アート館 新潟公演:2018年9月1日(土)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
神奈川公演:2018年9月7日(金)~9日(日)KAAT神奈川芸術劇場〈大スタジオ〉
まつもと公演:2018年9月29日(土)・30日(日)まつもと市民芸術館公演詳細について→ http://asagayaspiders.com/stage.html
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文:葛河梨池
小説家。葛河思潮社代表。虚構と現実を演劇的に旅することが可能な数少ない作家である。恐怖小説で人気を博した。近作に『小夜更方棘奇譚』など。現在は壮大な幻想小説の構想に着手している。長塚圭史の作品『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』や『あかいくらやみ〜天狗党幻譚〜』に登場した。
撮影:萩庭桂太
1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
http://keitahaginiwa.com/