小澤真智子のヴァイオリンがタンゴを弾くと、その音色は、超絶エモーショナルでメランコリック。胸の一番奥の奥まで、届いてくる。
今までで一番切なかったときのことを思い出す。
今までで一番激しかった想いがよみがえる。
夏の夜、小澤真智子の奏でるタンゴを聴いていたら、しばし暑さを忘れた。
 小澤は、ニューヨーク在住のヴァイオリニスト。昨年出したCD『MI OBLIVION』には、彼女が長年取り組んできたタンゴの昔と今が、濃密に閉じ込められている。
「私、タンゴとすごく相性が良いんです。何も考える必要がなく、すんなり、気持ちをそのまま入れて演奏できます。たとえばヨーロッパの音楽、モーツァルトを弾くとなると、どういうふうに弾こうか、すごく考えてアプローチしなきゃいけないのに」
 そういえば、日本でもタンゴが大ブームになった時期があったとか。昭和の時代には、タンゴの調べはもっと日常的に、CMとかでも流れていたような気がするし。
「だから日本人と、タンゴが生まれたアルゼンチンとは、どこか似ている、どこかで繋がっているんじゃないかと思うことがあります。地面を掘って掘っていくとたどり着く、地球の反対側にあるアルゼンチンだけれど、心の奥にあるパッションが、日本とアルゼンチンは共通しているんじゃないかって、いつも思うんです」
というわけで今週のYEOは、ヴァイオリニストの小澤真智子をクローズアップ。
クラシック音楽でヴァイオリンの技を磨き、一流の奏者になった彼女だけれど、それだけに飽き足らず、あれをやったりこれをやったりした結果、かなりユニークな演奏家となったいきさつを、金曜日まで連日更新。まずは音源、聴いてみて。かなり良いから。

  • 出演 :小澤真智子  おざわ まちこ

    ニューヨーク在住のヴァオリニスト。東京藝術大学卒業後、ロンドン・ギルドホール音楽院にてアーティスト・ディプロマ、ニューヨーク・ジュリアード音楽院にて修士号を取得。タングルウッド、アスペンとはじめとする海外の音楽祭に奨学生として参加。卒業後、2004年から2006年までメキシコ・シナロア州立交響楽団第1コンサートマスターとして活躍。2002年アメリカ、アーティストインターナショナル主催コンクールで優勝。2011年初アルバム『URBAN TANGO TRIO』をリリース。2015年からワシントンDCのS&R財団アーティスト・イン・レジデンスとして活躍。2018年日経ミューズサロン、昭和女子大人見記念講堂、鎌倉芸術館などで「小澤真智子旅するヴァイオリン タンゴ&ビヨンド」公演を成功させた。

  • 公式ホームページ(FB ・YOUTUBE・インスタグラムほかリンクボタンあり) https://machiko-ozawa.squarespace.com/about-machikoozawa/

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    取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/