今年７月、宮前真樹はイタリア・シチリアの広大なオリーブ畑の真ん中にいた。
「２年前に『代官山サラダ』という店のプロデュースをして、オイルの面白さに目覚めたんです。オイルは料理に欠かせない大事なものだし、日本ではあまり知られていないけれどたくさんの種類のオイルがある。サラダの次になにか新しいことをやろうと思ったときに、これだな、と。たまたまオイルの良さを広めていきたいというメーカーさんから声をかけてもらったこともあり、『ビューティオイルキッチン』を始めました」
　池袋や横浜、千葉のデパートでポップアップのショップを10ヶ月展開。さらにオリーブオイルのルーツを見て、体験するために、シチリアに向かったというわけ。
シチリア島南西部にある旧セリヌンテ町（現カステルヴェトラーノ地区）は、古代ギリシャ時代に築かれた町で、その土地にはミネラル成分が多く含まれているとか。大昔から、この地でオリーブが育てられ、オリーブオイルが生産されてきたという。
「限りなく、果てしなくオリーブ畑でした（笑）。あまりにも広いのでゴルフ場のカートみたいなのに乗って移動するんですけど、製法はすべてオーガニック、しかも手摘みです。本当にアナログな感じでやってました。畑のあちこちに放し飼いのロバとか犬とか猫とか亀とか鳥とか遊んでいて。樹齢千年のオリーブの木もありました。この場所が守られて、ずーっとオリーブが育ってきたんだなって、実感しましたね」
　ここで生産されるチェントンツェのオリーブオイルは、ミシュランで星を獲得しているレストラン50軒以上で使われているほどの高評価。
「すばらしい香りです。しかも初心者でもおいしく食べられる、柔らかいまろやかな味なんです。でものどにちょっとだけ、ほんの少しピリッとした辛みが残るんですね。それがポリフェノール。ふつうの食事にプラスしやすいです。塩やレモンを使わなくても、このオイルだけで食べられるくらいの逸品です」