#4 自分のアイデンティティを求めて
MOEKOOSAWA
- Magazine ID: 3613
- Posted: 2017.09.28
ゴージャスなルックス、華やかな経歴、グローバルな活躍。でも今までずーっと、MOEKOは自分のアイデンティティを探し求めてきた。
「今思うのは、自分のアイデンティティって集団の中でしか見つからないんですね。人によるのかもしれないけど。自分の個性を見つけようとすると、人は自分と向き合って、自分自分自分って考えるじゃないですか。でも、いくら向き合っても私のように最初に自分らしさがなくて不安な人間は、向き合えば向き合うほど、カラッポなのを再確認しまくるだけ。どんどん卑屈になるだけで、何も生まれるはずがない。私はそういう負のスパイラルを5年、6年繰り返して、凹んで、やさぐれていました(笑)。そんな中、「こんな大人にはなりたくない」とか、たくさんの人に囲まれて、ちょっとずつ「自分のなりたい自分像」がクリアになってきて。衝突や評価の中で、いろんな感情の渦の中から自分らしさを見出し始めた感じです」
そんなMOEKOが自分らしくいられる場所だと感じられるのは、子どもたちに囲まれているときだという。
「子どもってホントに残酷なくらい素直でしょ(笑)。「モエちゃん楽しい、カワイイ、大好き!」だけじゃなくて「赤髪キモイ」もあるし、しゃべりたくないと、ぜったいしゃべってくれない(笑)。わたしのことを嫌いな子もいる。でも私を嫌いって感情を持つことで、きっとその子は、逆に何が好きかを形成することができるだろうし。それでいいんです。誰かにとって、どんな形であれ、「何か」であれてるって実感がもてる事が、嬉しいんです」
月曜日の〈赤毛ばなし〉もそんな中での出来事だったのだ。
「養護施設訪問をしてると、ボランティアとかチャリティーとかって言葉でよく説明されがちなことに違和感があります。シドニーでホームレスを経験してる時に、最初に親切にリンゴをくれようとした人から素直にもらえなかったんです。ものすごいお腹は減っていたのに。最終的に空腹に耐えれず別の人から、リンゴをもらってかじったんですが、その気遣いを優しさだと感謝する心の余裕もなくって、ただただ惨めな思いで泣いたのを覚えています。
その感覚がずっと自分の中に残っていて、「人のやさしさに素直に感謝できないあの時の自分には戻りたくない」「素直に人の想いには感謝できる人間でありたい」という自分の生き方の軸と、「受け取る側が苦しくないように」自分のやり方、言い方を主張するのではなく、受け取り側が心地良く素直になりやすい表現方法に配慮出来る優しさを持ちたいと強く思うようになりました。
だから私たちが施設訪問で意気込んで、「やってあげる側」になってしまうと、「やってもらう側」を必然的に作ってしまう感じが、もはややさしくないと思うんです。うまく言えませんが、よかれと思ってやったことが、エゴや自己満足になってしまって、無意識に誰かを傷付けてしまう結果を招いてしまうなんて悲しいな、と。
だから私は「すごい人」とは言われたくない。「すごい」は誰かと比較してつくう評価だから。私が目指すのは「影響力のある人」。誰かにとって、自分を評価する物差しじゃなくて、良しも悪しも、「なりたい自分の指標を自分で見つめるキッカケ」になれる存在でありたい。それが私が見つけた「なりたい自分」。私のアイデンティティーです」
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出演 :MOEKOOSAWA おおさわ もえこ
ヴィジュアル・クリエイター(デザイナー)。2005年11月オーストラリアでクリスタル装飾(デコ)アートブランド『HIME(ハイミ)since2005』を創設。2009年より『StudioHIME』と改名し、京都&東京を拠点にオーダーメイド贈答品制作専門店として展開。2012年、自社ブランド及び、自身のアーティスト活動の場をハリウッドへ移籍、2013年総合デザイン会社『株式会社MOEKOOSAWA』を創立。代表取締役に就任。2017年4月、東久邇宮記念賞受賞。
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撮影:萩庭桂太
1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
http://keitahaginiwa.com/