ヴィジュアル・クリエイターMOEKO、生まれたのは兵庫県の淡路島だ。
「両親ともに教員で、小さい頃から『大澤先生の娘さん』と言われて育ったんです。
 小学校3年生までは、100点満点中の算数のテストで5点を取ったり、勉強はサッパリできないアホでした(笑)。それでもそんなに両親に怒られた記憶もなくのほほんとしてたんですが、ある日母親が泣いたんです。私、未熟児で生まれているんです。保育器に3ヶ月くらい入っていたし、私が勉強が出来なくて周りにアホやとからかわれて泣かされてるのは、自分が早くに生んでしまったせいかもしれない。あんたは悪くないと。自分を責めて。あれは未だに思い出すのもショックです。自分が怠けて宿題しなくてテストで悪い点数しか取れないせいで、母親を苦しめている! これはヤバイ! 私もものすごい悲しい!! と思ったのをリアルに覚えています。そこから私の「気合と根性でなんとかする!」セオリーが始まったように思います。「アホでも人一倍死ぬほど頑張って勉強したら、今よりマシになるはず!」と。少なくとも、何もせず、相変わらず5点を取り続けるよりも、30点取れるようになったほうが、みんな今よりハッピーなはず!と思ったのを覚えています」
小学校4年生からはずっと、優等生。成績も優秀で、大人になったら両親と同じく学校の先生になる、と、信じていたとか。
「でも高校3年生で進路を決めるというときに、気づいてしまったんです。当時付き合っていた彼氏にデートで『何を食べたい?』って聞かれたときに、決められなかった。私、その瞬間まで家の中でも友だちの前でも「いい子ちゃん」でいるのに必死で、「無難な模範解答」ばかりで、自分の意志や意見を持とうとしてこなかったんですよ。自分の意見を求められると、何も思いつかない、決められない。将来学校の先生になる、というレールの上を、何の疑いもなく走っていただけだった。愕然としました」
 淡路島を脱出して、京都の大学に入学。そこから本格的に自分探しが始まった。
「何も知らない自分をなんとかしようと思って、自分に自信がなかったから、とりあえず友だちを作ろうと思って、人気のあるギャルの真似をしたんです。金髪になり、ヒョウ柄の服を着て化粧が濃くなり、ダンスサークルに入って、人気のカフェバーでアルバイトをしました」
 気合と根性を振り絞り、環境にすぐに馴染んで、MOEKOはまたたく間に人気店員になった。ところが。
「友だちも増え、お化粧やファッションも覚え、なんとなく自信ぽいものもついた気になっていました、しばらくは。でも気づいたら、作り上げたキレイな見た目や知名度に寄ってくる大人ばっかりが周りに増えて、そえに「私じゃなくても代わりはいる」と中身はカラッポなまま、不安で自信がないままの自分だってことに気づかされて、スーパー人間不信に陥りました。大好きやった大事な人も傷付けてしまって。外側だけ作り込んだ虚像の評価に押しつぶされました。正直、海外なんて興味もなかった。でも、とにかくその場から逃げたい一心で、「語学留学」の名目で大学を1年休学し、オーストラリアに1年渡豪することを決めました」

  • 出演 :MOEKOOSAWA おおさわ もえこ

    ヴィジュアル・クリエイター(デザイナー)。2005年11月オーストラリアでクリスタル装飾(デコ)アートブランド『HIME(ハイミ)since2005』を創設。2009年より『StudioHIME』と改名し、京都&東京を拠点にオーダーメイド贈答品制作専門店として展開。2012年、自社ブランド及び、自身のアーティスト活動の場をハリウッドへ移籍、2013年総合デザイン会社『株式会社MOEKOOSAWA』を創立。代表取締役に就任。2017年4月、東久邇宮記念賞受賞。

    HP http://himejapan.com/

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  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/