#1 赤毛のMOEKO
MOEKOOSAWA
- Magazine ID: 3610
- Posted: 2017.09.25
すっごくキレイな赤い髪。それに合わせて眉も赤系。蠱惑的な目元には、ボリューミィなつけまつげ。しかも目元がキラキラしてる! つけまつげの目尻側、根元部分に、スワロフスキー社製、クリスタルラインストーンが、片目に15粒ずつ、ちりばめられているのだ。
「このつけまつげ、『DecomatsugeⓇ(デコマツゲⓇ)』というウチの商品なんですよ。これを宣伝するために髪の毛が赤くなったんです」
今週のYEOは、赤毛のMOEKOの物語。金曜日まで連日更新しても間に合わないくらい壮大なストーリーが始まるから、みんな、ついてきて!
「2010年の検索ワード1位が〝つけまつげ〟だったんです。今となっては「デコ」で通じる業界に成長したが、当時はウチの会社はもちろん、「デコ」というものがまだまだ普及以前に、知られていなかったので、ウチもつけまつげ作ったらHP上がるかなって。ギャルモデルがプロデュースする商品ならいっぱいあったのでそれとは違う、ジャンルレスの、大人の女性にアピールするまつげにしようと思った。まつげをアートにしようと思ったんです。売り出したのは2010年3月21日で、お金もないから私がモデルになる、モデル歴もあったしね、で、髪の毛を赤く染めたんですポスター用に」
キラキラゴージャスなつけまつげ『DecomatsugeⓇ(デコマツゲⓇ)』は大ヒット。彼女の運営する『StudioHIME』ハイミ の主力商品となった。以来、MOEKOの髪は、赤いままだ。
当初ブランディングのために赤くした髪は、今となっては彼女にとって商品PRのアイコンという位置づけ以上に意味のあるモノになっているという。「なぜ7年も赤髪をつづけているのか?」と聞くと、「個性の塊」のように見える彼女のヴィジュアルからは想像しにくい、苦悩と意外なまでの劣等感、自己形成に奮闘した等身大の彼女の姿が見えてきた。
「ポスター撮りした次の日、私が関わっている養護施設でバザーがあったんです。時間がないからそのまま赤い髪で行ったら、子どもたちは大喜びでした。しかも、いつもなら離れたところにいて皆にまざろうとしない、ちょっとすねた子たちまで私に向かって話しかけてきたんですよ。〝なにその頭、キモ!〟〝頭おかしいんちゃう?〟ってクソカス言われた。でもね、そのとき私、道がみえた、というか。
そういう施設には絶対何人か、興味関心をどう表現していいかわからなくなって、ちょっと悲観的、攻撃的にくってかかってくる昔の私みたいに不器用な子たちがいるんです。どうせ大人になんか俺等の気持ちわからへんし、って言う子たちが。日本て、個性を尊重しようと言いながらもまだまだ現実は、普通(みんなと一緒)が安心という風潮があるじゃないですか。人より肌に色が黒いからとか、人より足が遅いとか、とにかく人と比べて人と違うところを「普通じゃない」といじめられる。その子たちは施設にいるというだけで、普通じゃないっていう劣等感がめちゃめちゃあるんです。社会や大人も「しょうがない」「どう接して良いかわからない」と困惑してしまうから、わかってもらうこと諦めているし、だから誰もケアしてくれないし、不登校が増えるし、引きこもりが増えるし。そういう子たちにとって赤い髪した私はちょっとおかしい大人で、だからこそ、人と違った個性を持った自分たちと同じ側にいてるかも。あいつだったら話してもいいって、思ってくれる可能性がある。そのとき私は、方向性が見えた、というか。アイデンティティをやっと見つけた、というか。〝キモ!〟って言われながらもあっち向いていた子たちがこっち向いてくれるなら、自分のキューティクル犠牲にして白いベッドシーツを諦めてもいい。赤い髪でいようと思った。それができるのは私しかいない、って。ぶっちゃけ、アーティストになりたかったわけじゃない。経営者になりたかったわけじゃない。私の原点はまず、ひとりの人間として、自分に自信が持てるようになりたかったし、それは誰かの何かに寄り添え人になれたときに初めて、自分を少し認めれるようになるんじゃないかと、ずっと思ってきました。その手段が結果的に、アーティスト兼経営者っていう派手で過酷なキャリアになってしまっただけで。とにかくそんなわけで、そこから7年間、ずっと赤いんです。会社経営者という立場でありながら、赤髪である事は、なかなか「普通ではないので」まだまだ理解されがたく、非難の対象になる事も少なくありません。それでも私は、この型破りな赤髪だからこそ、私達が挑戦したい新しいサービスや概念の実現の可能性を訴える事が出来ると信じています。「あの会社なら!!」とお客様にドキドキわくわくしてもらえる存在であり続ける為に、代表である私自身が挑戦し続ける姿勢を見せ続けたいですし、「目立つ」からこそ、礼儀や品を欠かぬ様、常に意識は我々が発信したいモノは何か、という確信からブレずにいられるんです」
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出演 :MOEKOOSAWA おおさわ もえこ
ヴィジュアル・クリエイター(デザイナー)。2005年11月オーストラリアでクリスタル装飾(デコ)アートブランド『HIME(ハイミ)since2005』を創設。2009年より『StudioHIME』と改名し、京都&東京を拠点にオーダーメイド贈答品制作専門店として展開。2012年、自社ブランド及び、自身のアーティスト活動の場をハリウッドへ移籍、2013年総合デザイン会社『株式会社MOEKOOSAWA』を創立。代表取締役に就任。2017年4月、東久邇宮記念賞受賞。
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撮影:萩庭桂太
1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
http://keitahaginiwa.com/