#4 時代を経たからこその価値
通崎睦美
- Magazine ID: 3598
- Posted: 2017.09.07
今まで使っていたマリンバと木琴、そこに平岡養一の木琴も加わって、かさばる楽器が計11台。さらに集めたアンティーク着物や和装小物が、600点余。それらを収納するために通崎は8年前、自宅近くの売り家を買い取り、翌年改修して倉庫を作った。(その一部始終は『天使突抜367』(淡交社刊)というエッセイにまとめられている。)京都の長屋の典型的な構造を遺しつつ、たまたま近所で解体が始まった老舗商家の古材や調度品、建具なども受け継いで、超オリジナルでおしゃれ、しかも実用的な建物を造ったのだ。
「平岡さんの木琴が1935年製で、着物は大体、1920~30年あたりのもの。家の古材はいろいろですけど、でもまあ100年近く前のものが好きというか、私のところに集まっているということですね」
どうしてそんなに、古いものが好きなのだろう?
「古いものの味というのは、時間が経たないと出ないから。時間は取り戻せないじゃないですか。自分の寿命が何年かわからないけれど、平均的に70~80年と考えた場合、100年ものは今から作っても間に合わない。そういう意味で執着があります。時代を経たからこその価値、ですね」
とはいえ、古いものを今の私たちの暮らしに取り入れるためには、あれこれ工夫が必要だ。着物にしろ家にしろ楽器にしろ、全部新しいもので揃えたほうが、きっとずっと安上がりだったりする。
「確かに、それはそうです。古いものは、メンテナンスも大変ですから。ただ、そういった工夫や苦労を含めてこそが、古いものと付き合う愉しみ。そうしてでも付き合う価値がある、と思えるのです。やせ我慢と笑われるかもしれないけれど、いかに苦労を見せずにやっていけるか。まあそういうことですね(笑)」
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出演 :通崎睦美 つうざき むつみ
1967年京都市生まれ。5歳よりマリンバを始める。1992年京都市立芸術大学大学院音楽研究科修了。セルフプロデュースでマリンバの演奏活動を続けてきたが、
2005年木琴の巨匠・平岡養一が初演した紙恭輔『木琴協奏曲』(1944)を平岡の木琴で演奏。その木琴と楽譜、マレットを譲り受けた。以後、木琴の新たな可能性を探って演奏活動を続けている。13年9月『木琴デイズ 平岡養一「天衣無縫の音楽人生」』を講談社から上梓。第24回吉田秀和賞、第36回サントリー学芸賞(社会・風俗部門)をダブル受賞した。アンティーク着物のコレクターとしても知られている。
【コンサート情報】
木琴×箏&アコーディオン 通崎睦美コンサート「今、甦る! 木琴デイズ」vol.8~アンコールⅠ~
2017年10月26日①14時開演②19時開演 京都文化博物館別館ホール
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取材/文:岡本麻佑
国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。
撮影:萩庭桂太
1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
http://keitahaginiwa.com/