#1 木琴が好き
通崎睦美
- Magazine ID: 3595
- Posted: 2017.09.04
通崎睦美は、木琴奏者。音楽の学校を出てからずっとマリンバ奏者として活動していたけれど、あることをきっかけに、12年前から木琴を演奏するようになった。
「木琴が好きなんですよ、この音色が。マリンバは今も人に教えているので、そのときは触りますけど、ここ数年、リサイタルではずっと木琴しか弾いていません。マリンバを弾いてくださいっていう仕事のオファーがあっても、〝木琴、良いですよー〟って洗脳を試みます(笑)」
木琴とマリンバ、よーく似ているけど、全然違う楽器、らしい。
木の音板(鍵盤)がずらっと並んでいて、それをマレット(ばち)で叩いて音を出すのは同じ。鍵盤の下に共鳴管がついていて、音を増幅するのも同じ。だけど鍵盤表面の削り方によってチューニング方法が変わるので、比べてみると、木琴は高くて硬質な音、マリンバは柔らかくて響く音がする。例えれば、木琴の音は点、マリンバは線。点をつなげて旋律にする木琴に対して、残響が続くマリンバは音がそのまま旋律としてつながる。
マリンバが日本に入ってきたのは1950年代。80年代頃からは開発が進んで、音域がどんどん広がった。豊かに響く音が愛されて、いつしかマリンバが木琴に取って代わり、主流になったという。
そんな楽器事情は、だけど、聴き手には関係ない。ステージ上の通崎が弾く木琴の音に、〝硬質〟なんて言葉は似合わない。どこか懐かしく、素朴でまろやかで、あたたかい。
弾いている通崎自身も、楽しげだ。ポーカーフェイスで超絶速打ちをさらっとこなし、曲調に合わせてさまざまな音色を生み出していく。
「すごい速さで弾くのは、小学生でも練習すればできます。問題は速く打つときに、いかに音の粒が揃っているか。そういうことが聴いている人の心地良さに通じればいいと思うんです。音色の変化も、マレットを替えれば音が変わるのは当たり前なので、ひとつのマレットでどれだけ音色を変えられるか。木琴はそれこそが勝負の楽器なんです」
夏の強い陽射しもそろそろ終盤。そこかしこで、小さな秋が始まっている。そんな今週のYEOは、木琴に魅せられた通崎睦美の話。彼女が愛する着物のこと、彼女がずうっとそこで生きてきた京都の話などおりまぜて、金曜日まで連日更新します。
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出演 :通崎睦美 つうざき むつみ
1967年京都市生まれ。5歳よりマリンバを始める。
1992年京都市立芸術大学大学院音楽研究科修了。
セルフプロデュースでマリンバの演奏活動を続けてきたが、
2005年木琴の巨匠・平岡養一が初演した紙恭輔『木琴協奏曲』(1944)を平岡の木琴で演奏。
その木琴と楽譜、マレットを譲り受けた。
以後、木琴の新たな可能性を探って演奏活動を続けている。
13年9月『木琴デイズ 平岡養一「天衣無縫の音楽人生」』を講談社から上梓。
第24回吉田秀和賞、第36回サントリー学芸賞(社会・風俗部門)をダブル受賞した。
アンティーク着物のコレクターとしても知られている。
【コンサート情報】
木琴×箏&アコーディオン 通崎睦美コンサート「今、甦る! 木琴デイズ」vol.8~アンコールⅠ~
2017年10月26日①14時開演②19時開演 京都文化博物館別館ホール
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取材/文:岡本麻佑
国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。
撮影:萩庭桂太
1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
http://keitahaginiwa.com/