で、今日登場するのは、『王将』を支えるベテラン俳優たち。みなさんキャリア25年から40年以上というツワモノ揃いだ。山内圭哉(右端)は言う。
「ここにいらっしゃる方たちは、僕らが最初に出て欲しいと思った人たちです。世界観としてこういう人たちがいてるほうが絶対にいい。金井良信さん(左端)はアングラの唐十郎さんとこにいた人やし、櫻井章喜さん(後列左から2番目)は文学座、弘中麻紀さん(中央)は『ラッパ屋』、さとうこうじさん(右から2番目)はジプシーみたいにいろんなとこに出て30年。こんなふうにバラバラに、いろんな国の人がおったほうが面白いなと。この人たちなら多少不自由な状況でも楽しんでくれるはずやと思っとったけど、まんまと楽しんでくれてるみたいで(笑)」
 稽古場に入ると、そこには小劇場『楽園』と同じサイズの舞台と客席が作られている。つまり稽古場にすっぽり入ってしまうほど、小さい舞台ということだ。一応楽屋はあるけれど、衣装替えや小道具の置き場所にしかならない。究極の、ミニマリズムだ。
そして今日撮影しているここは、稽古場附属の台所。めいめいに茶碗を持って何をしてるかというと・・・・。
「ちゃんとペイできない公演なんで、できることをしようと、お米だけは炊いてあるんです。レトルトのカレーとか差し入れのおかずとか用意してね。あと、僕にできることはないか、考えた末にやってることは、稽古が終わると率先して酒を飲み、みんなを巻き込んでコミュニケーションを取るということ。飲みに行くのもお金使わせたらあれやから、ここに酒置いてます」(山内)
 舞台が狭くても、楽屋がなくても、何役もふられても、百戦錬磨のこの人たちにとっては、ノープロブレム。
「僕は映画館で芝居したこともありますよ。スクリーンの前の何10センチ幅のところで芝居して、舞台転換もしてね。そういう経験があるから、この舞台が狭いとは思わない」(金井)
「楽しいですよ、小さいからこそ、ウソはつけないし」(弘中)
「背中見せてもバレてるからね、何をしているか」(櫻井)
「僕はそれより、こんなにちゃんと大阪弁をやるのが初めてで、勉強になってます」(さとう)
 そう! 今回、若手もベテランも、俳優たちがみな口にするのは、ここで使われる関西弁の難しさだ。山内圭哉が、方言指導を徹底しているという。
「かなり古い大阪弁で、今現在、街中で聴ける言葉ではないんです。言うたら、落語にしか出てこない江戸弁みたいなものかな。しかもディープな天王寺、貧乏長屋から始まるという、ね。今回、関西出身の俳優さんが多いけど、皆さん苦労してます」(山内)
 緻密で濃密な舞台が、こうして熟成されていく。