『王将』三部作は、明治から昭和にかけて活躍した将棋棋士・坂田三吉の物語。
大阪・天王寺に住む三吉は、無学文盲ながら独学で将棋を学び、家庭も仕事もほっぽり出して将棋三昧の日々。どんどん腕をあげるが、やがて名人の称号を巡って東京の将棋連盟と対立する。弟子の離反にあったり、事故や戦争で弟子を失ったりと、その人生はうまくいかないことだらけ。傷つき、もがき、七転八倒しながら、それでも将棋を打ち続ける三吉の半生を描いている。
そんな男のありようを、くっきりと際立たせるのが、女の存在。女房の小春、長女玉江、次女君子だ。
将棋に打ち込む三吉を励まし、貧しさも何もかも受け入れる恋女房小春を演じるのは、常盤貴子(右から2番目)。人気も実力もあるスタア女優であり、脚本&演出を担当する長塚圭史のパートナーだ。彼女が演じる小春は芯のしっかりした、健気で一途ないい女。この小春の面影が、全編を通して、三吉という男の純情を伝えてくる。
「新ロイヤル大衆舎の立ち上げでみんながワイワイ盛り上がっているのがすごく楽しそうだったので、〝一緒にやらない?〟と誘われたときについつい乗ってしまったんです(笑)。そのときはこんなに大きなこと、大変なことになるとは思わなかったんですけど」(常盤)
 小春が病に倒れた後、三吉の面倒を見るのが、江口のりこ(右端)演じる長女の玉江。母亡き後、周囲の思惑に翻弄されがちな三吉を、必死で支え続ける。
「『王将』は客としてぜひ観に行こうと思っていたんですけど(福田)転球さんとか(長塚)圭史さんに呼んでいただいて。〝全然お金にならないし、全部自分たちでやらなきゃいけないけど、それでもいい?〟って(笑)」(江口)
 次女の君子もまた、次第に老いていく三吉を見守り続ける。妻と娘たち、女の視線があることで、三吉の男としての業が、くっきりと浮かび上がるのだ。演じるのは、森田涼花(左から2番目)。
「私はオーディションでこの役をいただきました。舞台はもう何本かやっているんですけど、今回は共演の方たちがすごいので、毎日特等席でお芝居を見せていただいている感じです」(森田)
 華やかな女優陣と一緒に、まるで番頭さんのような風体で笑っているのは、大堀こういち(左端)。本作では語り部として、物語の進行を司る。ムードメーカー、狂言回し、総支配人、雑用係、大道具小道具、すべてを担当し、滞りなく舞台を作り上げていく。
「ただしゃべるだけならいいけど、客に問いかけたりいろいろな所作もあって、大変です。なんかね、このお芝居どうなるんでしょうね。でもたぶん、大丈夫でしょう(笑)」(大堀)