次々にしゃべりの場を開拓して、ラジオの世界で生きてきた沖直実。だけど40歳を前にして、壁にぶち当たった。

「沖さん、専門的に何がしゃべれるんですか? って、聞かれることが多くなったんです。それまでは面白くてノリがいいねーちゃんで良かったんだけど、40近くになると、何か資格あるんですか? 得意分野はなんですか? って。そうか、生き残るためにはなにかもう1本、柱が必要だな、と思って、急いで探し始めたんです」

 映画、お酒、フットサル・・・・。好きなものを考えたけれど、すでにその分野には人材が豊富だ。消費生活アドバイザーやお天気キャスターも、勉強が必要だし倍率が高い。なにか面白そうな、誰もやってないものはないだろうか? 

「あ、女性のアイドルについて話をしている人はいるが男性のアイドルについてしゃべる人は、まだいないかもしれないなと。相談やヒントをくださる方もいてじゃあ〈いい男評論家〉とか〈いい男コメンテーター〉という形でやってみよう、と」

 自称するだけでは、心許ない。

「武装するために、『沖直実のいい男祭り』という名称で、まずはイベントを企画しました。それまでにも毎年、ラジオのリスナーさん等を集めて私のソロトークイベントはやっていました。それをイケメン一色のイベントに染めかえてみた。するとそれが、なんと、チケット即完売になったんです!」 

 イベントに呼んだ〝いい男〟たちのおかげだった。知り合いの芸能マネジャーに頼み込み、若手でまだ無名のスター候補を何名かキャスティングしたのだが、その中にはダイヤモンドの原石がごろごろと混ざっていたのだ。

「そうやってイベントに来てもらった男の子の中には、ブレイク前の城田優クン、斎藤工クン、上地雄輔クン、『めちゃいけ』レギュラーになる前の敦士クンや後に仮面ライダ-や戦隊物に選ばれる男の子が沢山でてきました。そうなると『いい男祭り』に出たいと名乗りをあげてくれるイケメン男子も増えてきたんです」

 さらに肩書きを『いい男評論家』を『イケメン評論家』という言葉に置き換えた途端、ネット検索にひっかかるようになり雑誌から取材オファーが来たり、テレビの情報番組からも連絡がくるようになる。このタイミングで沖直実は、自分自身にムチを入れる。

「一回の出演で満足しちゃったら、そこで終わりなのでせっかくのチャンスです。テレビのディレクターさん等に会う機会があれば必ず、企画を5本、10本作って持って行くんです。待っていても仕事は来ないと思っています(笑)『今度はCMイケメンを特集しませんか?』『新ドラマのイケメン特集はどうでしょう?』って」

そうやって出した企画の中に、『オリンピックイケメン』があった。

「2012年のロンドンオリンピックのとき、テレビ番組で1週間毎日〈日本と海外のイケメン選手企画〉というのをやったんです。たまたま見てくださった方が多かったのか、ソチオリンピックのときもやりました。なんとなくイケメンについて話す変なおばさんがいる・・とありがたい事にほんの少しだけ知ってくれる方がでてきました」

 今年は〈イケメン評論家・沖直実監修〉で、リオ・オリンピックのイケメンを集めた写真集まで発売。見事、イケメン評論業界の、第一人者となったのだ。

  • 出演:沖直実(おき なおみ)

    ラジオパーソナリティ、MCなどで活躍する一方、2004年から企画・プロデュース、演出、司会すべてを担当する『いい男祭』を開催。イケメン評論家としてフジテレビ『ノンストップ』をはじめ多くの情報番組に出演している。ブレイクする前の斎藤工、上地雄輔、城田優、めちゃいけのレギュラーの敦士くん等、いち早く目をつけた。
    連絡先 株式会社ティーワン 03-3377-1328 okinaomi7@gmail.com
    オフィシャル・ブログ http://ameblo.jp/okinaookinao/

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/