田中道子は〈ミス・ワールド2013〉の日本代表に選出された。ミス・コンテストといえば水着審査のシーンが目に浮かぶけど、ミス・コン業界でも老舗の〈ミス・ワールド〉にノミネートされると、それだけではすまない。知性や教養、コミュニケーション能力まで問われるのだ。

「日本代表になってから世界大会に出発するまでの間に、日本舞踊、英語、スピーチ、モデル・ウォーキングなどのレッスンが続きました。選考期間が1ヶ月あり、その間毎日ドレスを着替えるのが暗黙の了解になっているので、そのドレス集めにも奔走しましたね。他国のミスたちと友だちになるためのお土産も揃えて、毎日寝る間もなく、走り回ってそのままの流れで世界大会のあるバリ島に飛んだんです」

 集まったのは130カ国のミスたち。そこで田中は、予想外の事態に直面した。

「特技を披露して評価される、タレント賞というのがあるんです。そこで私はハープを演奏しようと思っていたんですけど、ハープを用意できないという連絡が、日本を出発する3日前に入りました。諦めるのは悔しいし、何かインパクトのあることができないかと知恵を絞りまして、いきなりひらめいたのが、カワラ割り(笑)。日本からカワラを送ってもらう手筈を整えて現地に向かいました。で、本番前日に日本から届いた荷を開けたら、中のカワラが全部割れていたんです! 割りやすいように柔らかいカワラを入れてくれたらしいのですけど(笑)」

 万事休す。でも田中は諦めない。

「空手の型を披露することにしました。もちろん、やったことないので、YouTubeを調べて型を8種類くらい暗記したんです。見せるのは1分間と決まっていたので見様見真似、ハッタリで乗りきろうと(笑)。やってみたら案外評価が高くて、いいところまでは残ったんですけど、タレント賞は取れませんでした」

 結局、トップ30まで残ったものの、入賞は果たせなかった。とはいえ、たったひとり世界大会で奮闘した経験は、大きかったという。

「土壇場で、どうしようもない局面に立たされてもひとりで乗り越える力がついたような気がします。もともと諦めが悪いんです。チャンスがあるならしがみつきたい、というところが、ありますね。ミス・ワールドに挑戦したおかげで、度胸も自信もつきました」

 さあこれからはモデルとして、そしていつかは女優として頑張ろうと、意気揚々と帰国。ところがそこから先にも、思いがけないハードルが待っていた・・・・。

  • 出演:田中道子(たなか みちこ)

    1989年8月24日生まれ。静岡県出身。「ミス・ワールド2013」日本代表。モデルとして活動の後、2016年3月に女優宣言。10月スタートする『ドクターX~外科医・大門未知子~』第4シリーズ(テレビ朝日系、毎週木曜よる9時~)で西田敏行氏演じる東帝大学病院病院長・蛭間の秘書兼愛人・白水里果役を演じる。

    オフィシャルブログ http://ameblo.jp/michiko-tanaka-blog/

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/