この春行われた日本代表チームの合宿には、ニコニコしながら選手たちにドリンクを渡す、若い女性たちの姿があった。練習前にはサイドラインのフェンスを設営し、終わるとそれを撤去。ボールを集めたりお弁当の手配をしたり、やるべき作業はいくらでもあるけれど、笑顔でシャキシャキ働いている。ボランティアで参加しているサポーターたちだ。彼らはNPO法人日本ブラインドサッカー協会(JBFA)にボランティア登録していて、自分ができるときに合宿や練習、試合のサポートに参加しているという。今、ボランティアリストには5百人程度登録していて、中でも熱心なメンバーを紹介してもらった。

 青柳美希さんは幼稚園の先生。土日に合宿や試合、練習があると、参加しているという。

「初めて来たときは〝目が見えていない人にどう接すればいいんだろう? どう関わればいいんだろう?〟って、そこからでした。障がい者に対して、自分で壁を作っていたんですね。でも実際に自分が一歩踏み込んでみたら、特別なことは何も必要ない、同じ人間同士だということがわかったんです。こういう活動を人に話すと、『目が見えない人のお手伝いしていて偉いね』なんて言われますけど、そう言われるのはどうしてもイヤで(笑)。『違う、一緒にやっているんだ!』って思っています」

 矢田あゆみさんは、大学4年生。

「高校のときもサッカー部のマネジャーをやっていましたし、中学の頃は子ども水泳教室のお手伝いしていたし、人を支えるとかサポートするのが好きなんです。マネジャー体質? そうかもしれません(笑)。いろんな人と関わりたいという思いも強いですね。ブラインドサッカーの選手たちと接していたら、身振り手振りが伝わらないので、言葉だけでいかに伝えるかというのを意識するようになりました。コミュニケーション力はついたかも(笑)。今就活中ですけど、面接でもこういう活動をしている話をすると、反応がすごいです。べつに、そのために参加しているわけじゃありませんけど(笑)」

 ふたりとも、ブラインドサッカーの入り口は、『インフィニティ(infinity)』というサッカー愛好者のためのグループ。ふつうのサッカーをふつうに応援するうちに、さまざまな形態のサッカーがあることを知ったという。

「ブラインドサッカーのなにが一番魅力的かというと、選手との距離が近いんです。初めてサポーターとして参加した人も、選手に直接声をかけることができる。サポートメンバーが少ないときは、選手と一緒にピッチを設営したこともあります。自分もチームの一員のような感じで、自分にもできることがあるはずって、思えるんです」

  • NPO法人日本ブラインドサッカー協会 

    オフィシャルサイト  http://www.b-soccer.jp/

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/