16才でアイドルデビューして、活動していたのは約6年間。『ribbon』は解散しないまま休業状態に突入し、再開することなく今に至っている。

「アイドルの頃は何もわからないことだらけ。鼻高々になっていた時期もあったし、人の痛みなんてわからないし、苦労も知りませんでした。私自身がそんな自分に疑問を持って、少し休みたいと申し出てribbonは活動休止になったんです。
 でもその後しばらくの間、引きこもり状態でした。昨日まで一緒に仕事をしていた人たちがテレビに出ているので、テレビも見るのがツラい。その頃はまだ顔を知られていたので、外も出歩けない。誰とも話したくなくて、電話も留守電のまま。1年半くらい、そんな状態が続きました。その間、支えてくれたのが今のダンナさんです。25のときに結婚しました」

 それからは専業主婦として、料理作りに励む日々。運動不足を実感して、29才頃、スポーツジムに入ってみたら、楽しかった!

「週5で通いました(笑)。汗を流す気持ち良さを知ったし、ジム仲間ができて、心がすっと軽くなったんです。私が元アイドルとわかっていても何も言わず、受け入れてくれた。それぞれの事情は暗黙の了解で、聞かなくてもわかりあえる居心地の良さがありました」

 芸能界でもう一度、という誘いもあった。20代後半と30代半ば、女優として舞台に立ったこともある。だけど、

「やっぱりここは自分の場所じゃないと、肌で感じたんです。舞台に出るために必死で頑張っている人たちがたくさんいるのに、いきなり飛び込むことに気が引けてしまったし、申し訳ない気持ちもありました。舞台の上でちゃんと演じることはできても、ああ、そんなに甘いもんじゃないなって」

 ちょうどその頃、通っていたジムで、インストラクターにならないかと、勧められた。彼女の脚のふくらはぎを見た人が、その筋肉はタダ者ではない、とスカウトしたという。

「最初は、断ったんですよ。せっかくの趣味が仕事になっちゃうのはイヤだと思ったんです。でもインストラクターになるかならないかはともかく、1度やってみようと講習を受けました。今はもう、こんなに良い仕事はないと思っています。自分でも動けるし、楽しいし、汗をかけるし、一石二鳥どころか、良いことだらけ(笑)」

 インストラクターとして、目標もできた。

「ジムに通いだしてから、体を動かせば気持ちまで元気になれることを実感したんです。私自身が救われたから、今度は私が誰かを元気にしたい。ひとりでも多くの人に、健康で元気になって欲しいんです」

  • 出演:松野有里巳(まつの ありみ)

    1973年東京生まれ。1989年アイドルグループ『ribbon』として佐藤愛子・永作博美と3人組でデビュー、1995年に活動休止。その後は歌手・女優として活動していたが25才で結婚して芸能界を引退。専業主婦になってからスポーツジムに通うようになり、35才でインストラクターの資格(JAFA認定エアロビックダンスエクササイズインストラクター)をとった。エアロビクス、ヨガ、ピラティス、フラダンスなどさまざまな講師の資格をとり、人気インストラクターに。2013年自ら考案したダンスエクササイズを『松野有里巳のアゲアゲダンスDVD付(DVD BOOK)』(ベースボールマガジン社刊)として発表した。

    オフィシャルブログ「おいしい毎日」http://ameblo.jp/arimi-matsuno/theme-10096209237.html

    『あげてこ体操 アゲアゲダンス2』

    『アゲアゲダンス』を出した3年前、〈ダンス〉というだけで敬遠する人が多いことに気付いた松野さん。運動の楽しさを多くの人に伝えるため、もっと簡単で、老若男女・誰でもできる簡単な動きを中心に、今回は〈体操〉を提案。大きな筋肉を動かし、代謝を良くして体を元気に、気分をアゲてくれるエクササイズを提案している。椅子に座ってもできるバージョン、より激しい動きをしたい人向きのダンスバージョンなど、中身は盛り沢山。オリジナル楽曲は夫のたかはしごうさんが作曲、もちろん歌っているのは松野有里巳さん自身だ。
    ★問い合わせ先 スクロール 03-3225-3081 http://www.scroll2003.com/contact/

    撮影協力 ティップネス 下北沢
    http://tip.tipness.co.jp/shop_info/SHP002/

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/