ストリートダンスなんて興味なし、と言い切っていた女性たちを、次から次へ前のめりにさせた張本人がこの人、DAZZLE主宰の長谷川達也だ。いったいどういうカラクリで?

「結成当初、ストリートダンスの集団はすでにいくつか存在して、僕らは後発だったんです。その中でいかに抜きん出るかを考えました。ダンスに関わるいろいろな要素、音楽、ファッション、空間、照明、美術にこだわり、自分たちらしいものをセレクトしていくことで、独自性を見つける。それが勝ち残っていくために一番大事だと思いました。しかも僕が表現したいと思うものにはどうしても物語が必要だったので、映画とかマンガ、アニメやゲーム的要素を取り入れました」

 そうした努力の結晶が、DAZZLEの数々の演目。幽玄、妖しさと哀しさ、時代を超越した永遠、躍動感と生命の神秘がすべて、多種多様な踊りによって表現され尽くす。驚嘆すべきは、その姿勢が20年間ぶれなかったこと。

「そうですね、なんでぶれなかったんだろう?(笑)基本にあるのは、ダンスってすごく面白いんだよってことを、みんなに伝えたい、それだけです。でもダンスを知らない人にそれを伝えるのは難しい。どんな人が観ても面白いと思える作品にしなければならない。DAZZLEはダークな演目が多いと言われるし、もっとメジャーになるためにわかりやすい、明るいテーマで作れとアドバイスされることもあります。でも僕自身、絶望の中から希望を見出す物語が好きですし、観た人が絶対喜んでくれる自信があるから続けている。いや、でも、・・・・諦めが悪いだけかもしれませんね(笑)」

 20年目の今年、長谷川が発表するのは新作『鱗人輪舞 (リンド・ロンド)』。

「千年を生きた人魚の話です。荒廃して海のない世界にその人魚が現れる。今の時点でお話できるのはそこまでですが、今回一番の目玉は、お客さんに物語の行方を決めていただくということ。重要な分岐点でどちらにするか、お客さんに選んでもらう予定です」

 公演まで3ヶ月。すでに新作の稽古は始まっている。8人のメンバーが集まって長谷川とともに振付を考え、複雑で巧妙で膨大な動きを自分たちの体に叩き込んでいく。

「イメージ通りにできるまで、やります。手の位置が数センチズレるだけでイヤなんです。音に合わせて瞬間的にぱっと、完璧に動けるまでやります。ダンスを始めた当初から、できないことはできるまでやる、というのが僕のポリシーなんですよ(笑)。大丈夫、もうメンバーみんなは慣れています。20年間やってきたんですから(笑)」

  • 出演:長谷川達也(はせがわ たつや)

    1977年千葉県生まれ。ダンスカンパニー「DAZZLE」主宰、ダンサー、演出・振付家。SMAP、V6、TRF、Mr.childrenらのアーティストのサポート・ダンサー、PV出演などを務め、その後舞台作品の振付、出演など幅広く活動。ストリート・ダンス、コンテンポラリー・ダンスで受賞多数。

    DAZZLE オフィシャルサイト http://www.dazzle-net.jp/index.html

    【公演情報】

    DAZZLE20周年記念公演
    「鱗人輪舞」 (リンド・ロンド)
    演出:長谷川達也 脚本:飯塚浩一郎 出演・振付:DAZZLE(長谷川達也、宮川一彦、金田健宏、荒井信治、飯塚浩一郎、南雲篤史、渡邉勇樹、高田秀文)
    10月14日(金)~23日(日)あうるすぽっと(豊島区舞台芸術交流センター)DAZZLE席8000円指定席6000円
    問い合わせ:キョードー東京 0570-550-799 http://kyodotokyo.com/dazzle20

    ここ数年は「大友克洋GENGA展」(2012)への特別出演、「ASTERISK」(2013、2014・東京国際フォーラム)の演出・脚本・主演、津軽三味線や和太鼓など日本の伝統音楽との共演、坂東玉三郎演出による舞台「バラーレ」(2015)など、さまざまな挑戦をしながらダンスの未来を切り拓いてきた。20周年記念公演ではこれらの成果を生かしつつ、美しさと妖しさに満ちた新作でDAZZLEワールドへと誘う。

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/