矢鍋智子さんは舞台照明の専門家。もともと音楽好きで、コンサートの照明をやりたくてこの道に入った。

「照明の機材は重量級のものばかりなので、力仕事です。〈ライティング・デザイナー〉なんてカタカナに惹かれてこの職業に憧れる女の子も増えていますけど、少なくとも私が思うにめちゃくちゃガテン系だし、めちゃくちゃ職人の世界ですよ(笑)。作業で5日間徹夜だったなんてこともありますし、命綱をつけた20㍍以上の高所作業もある。電車で立ったまま、つり革につかまって寝られる術が身についてます(笑)」

 サバサバっと、カッコイイお姉さんだ。そんな矢鍋さんがDAZZLEを知ったのは、12年前。

「ダンスのイベントの仕事で、私はストリートダンスとか全然興味がなかったのでいつも通り仕事していたんですけど、DAZZLEが踊り始めた途端、こう、体が前傾して目を離せなくなりました(笑)。今まで見たこともないような宝石を見つけたような気分でした。しかもその宝石は、加工されていないのに光り輝いていたんです! その2年後、2006年に再び彼らの舞台を担当する機会があって、またそのときのパフォーマンスが秀逸だったんです。で、ふだんはそんなこと、絶対しないんですけど、連絡先を調べて〝すごく良かった〟と伝えたんです。そこから彼らとつながりができて、〝僕たちこれから公演するんですけど、手伝ってくれませんか?〟と。それからずっと、です」

 DAZZLEの舞台は静から動へ、動から静へと、ドラマチックに変容する。音や光や映像とともに、8人のメンバーが流れるように動き、踊り、存在する。照明はそのパフォーマンスを盛り上げる、重要なファクターだ。

「ですから人間が彼らの舞台をマニュアルでオペレートするのは不可能です。彼らの動きは緻密だし、きっかけも細かい。映像も音響も照明もすべて彼らの動きに合わせて、事前に30分の1秒単位でプログラミングし、コンピューター制御します。準備には膨大な時間と労力を費やしますね(笑)」

 でも踊る彼らは人間だもの、日によってちょっとズレたりしますよね?

「それが、ズレないんです! そこがすごい。彼らの体内時計はかなり正確です。一糸乱れぬ精緻をきわめた群舞は、まるで万華鏡のようです」

 舞台制作のプロフェッショナルであり、数多の舞台を観てきた矢鍋さんが絶賛する、DAZZLEの舞台。これはやはり、1度は観なくちゃ!

  • 出演:矢鍋智子(やなべ ともこ)

    ライティングビッグワン(株)所属。主に音楽関係の舞台照明を担当。今年3 月~4 月は、柚希礼音の宝塚退団後、初ソロ・コンサート「REONJACK」の照明デザインに従事。

    DAZZLE オフィシャルサイト http://www.dazzle-net.jp/index.html

    【公演情報】

    DAZZLE20周年記念公演
    「鱗人輪舞」 (リンド・ロンド)
    演出:長谷川達也 脚本:飯塚浩一郎 出演・振付:DAZZLE(長谷川達也、宮川一彦、金田健宏、荒井信治、飯塚浩一郎、南雲篤史、渡邉勇樹、高田秀文)
    10月14日(金)~23日(日)あうるすぽっと(豊島区舞台芸術交流センター)DAZZLE席8000円指定席6000円
    問い合わせ:キョードー東京 0570-550-799 http://kyodotokyo.com/dazzle20

    ここ数年は「大友克洋GENGA展」(2012)への特別出演、「ASTERISK」(2013、2014・東京国際フォーラム)の演出・脚本・主演、津軽三味線や和太鼓など日本の伝統音楽との共演、坂東玉三郎演出による舞台「バラーレ」(2015)など、さまざまな挑戦をしながらダンスの未来を切り拓いてきた。20周年記念公演ではこれらの成果を生かしつつ、美しさと妖しさに満ちた新作でDAZZLEワールドへと誘う。

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/