長い間自分たちの力で活動してきたDAZZLEが、マネジメント業務を外部に委託したのは3年前のこと。引き受けたのがこの女性、前淵沙耶香さんだ。メンバーのひとりである飯塚浩一郎の大学の後輩だったことからDAZZLEとの縁が始まったのだが・・・・。

「飯塚は大学を出て、広告代理店に入ったのにDAZZLEをやるために退社してしまった人なんですけど(笑)、〝DAZZLEを観に来てくれ〟と何度言われても、私は全然行かなかった。もともと私は子ども時代から体育会系の乗馬をやっていたり、大学時代はラグビーサークルのマネジャーをしたり、厳しい規律のある世界にいて。ストリートダンスなんて、体育館の前に集まってヤンヤン音出してうるさく踊ってる、悪そうなイメージしかなかったんです(笑)。結局、飯塚が加入して2年くらい経ってから、開催される場所が家から近いという理由で観に行った。その時最後に、今やDAZZLEの代表作となった『花ト囮』の〝狐の嫁入り〟シーンが次回作の宣伝として披露されたんです。その瞬間、衝撃を受けて、胸が締め付けられるようで、涙がこぼれました。〝何これ?〟と。それがファーストインパクトですね。それ以来全公演、足を運ぶようになりました」

 前淵さん自身は大学を卒業後、芸能プロダクションに就職し、デスク業務から営業、現場のマネジャーとしてもフル回転。2013年に独立して『株式会社SMAG』を設立したのを機に、DAZZLEのマネジメントを引き受けた。

「舞台を作る人たちをマネジメントするのは初めてなので、当初は戸惑いもありました。この人たち、簡単には言うこと聞いてくれないので(笑)。彼らには20年やってきた自負がもちろんあるし、私は長谷川をはじめメンバーみんながブレずにやってきたことを尊敬しています。舞台作りに口を出すつもりはありません。でもやっぱりメジャーになって欲しいし、「知る人ぞ知る」という存在で終わって欲しくない。今後も続けていくために、もっともっと売れなきゃいけないですよね」

 前淵さんが担当するようになってから一番の変化は、DAZZLEのメンバーの服装がおしゃれになったこと。実は前淵さん、メンバーの飯塚と一緒に、ファッションブランド『MUBAC』を立ちあげるほどのファッション通なのだ。

「キレイで動ける、美しさと機能性を両立させた服が作りたかったんです。裏テーマは〝踊れる服〟。DAZZLEのメンバーが今日着ている黒いジャケット&パンツも『MUBAC』のもので、ストレッチが効くのでどんな複雑な動きにも対応出来ます。舞台衣装としても使っているんですよ」

 これから10月の20周年記念公演に向けて、忙しい日々が続く。

「マネジャーの私は公演中いつも、会場の最後列で観ています。舞台よりもお客さんの顔や反応を見ていることが多いですね。公演の最後、お客さんから割れんばかりの拍手をいただく瞬間に、本当にやってきて良かった、と思う。その人たちがどういうDAZZLEを観たいのか、いつも考えています。ファンが喜んでくれるものを作ることこそが、DAZZLEの明日につながると信じていますから」

 

  • 出演:前淵沙耶香(まえぶち さやか)

    1980年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部入学後、大学3年で入ったメディア系ゼミにて、後にダンスカンパニーDAZZLEに所属する飯塚と出逢う。卒業後は某芸能プロダクションに入社。営業事務やタレントのスケジュール管理をするデスク業務を経て、元テレビ局アナウンサー、モデル、タレントの営業、現場、広告&イベント窓口など様々な仕事を担当。退職後、2013年2月に主に文化人マネジメントを行う株式会社SMAGを設立。そのタイミングで予てよりマネジメントを相談されていた株式会社DAZZEと業務提携を開始。2016年1月より飯塚と共にアパレルブランド「MUBAC」をスタート。ブランドのアーティスティック・ディレクターも兼任。

    DAZZLE オフィシャルサイト http://www.dazzle-net.jp/index.html

    【公演情報】

    DAZZLE20周年記念公演
    「鱗人輪舞」 (リンド・ロンド)
    演出:長谷川達也 脚本:飯塚浩一郎 出演・振付:DAZZLE(長谷川達也、宮川一彦、金田健宏、荒井信治、飯塚浩一郎、南雲篤史、渡邉勇樹、高田秀文)
    10月14日(金)~23日(日)あうるすぽっと(豊島区舞台芸術交流センター)DAZZLE席8000円指定席6000円
    問い合わせ:キョードー東京 0570-550-799 http://kyodotokyo.com/dazzle20

    ここ数年は「大友克洋GENGA展」(2012)への特別出演、「ASTERISK」(2013、2014・東京国際フォーラム)の演出・脚本・主演、津軽三味線や和太鼓など日本の伝統音楽との共演、坂東玉三郎演出による舞台「バラーレ」(2015)など、さまざまな挑戦をしながらダンスの未来を切り拓いてきた。20周年記念公演ではこれらの成果を生かしつつ、美しさと妖しさに満ちた新作でDAZZLEワールドへと誘う。

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/