旺盛な冒険心で、新しい仕事、新しい世界に次々とチャレンジしていく若村さん。挑戦に次ぐ挑戦で、疲れてしまうことはないのだろうか?

 「自分の知らないことに挑戦したいというのは、言わば、私のクセなんですね。どんな小さなことでもいい。自分にとって何か新鮮に感じられる要素がないと、仕事でもプライベートでもヤル気が起きなくて」

 とはいえ年齢を重ねていくに連れ、「これは、ぜひ若村さんに」と言われた仕事は、出来る限り引き受けるようにしているそう。

 「若い頃は力が入り過ぎていましたね。こだわりのストライクゾーンがとても狭かったと言いますか。それが年齢を重ねたおかげで、範囲が広がった。今の心境は、『目指せ、イチロー』みたいな(笑)。イチローさんのように、どんな玉が来ても打てたらカッコいいなと、近頃は思うようになりました」

 10代、20代の頃はストイック。すべてに関して『0 か100 か』だったがために、周囲とぶつかることや傷つくことも多かった。

 「それが今では、たとえ予期せぬ出来事が起こっても、『それもまた良し』と思えるようになりました。この言葉は私が尊敬する斉藤光正監督がおっしゃったもの。あるドラマでお墓のシーンを撮影するときに、現場に行ったら隣が工事中で、クレーン車が作業を始めてしまった。『今日の撮影は無理!』と誰もが思う状況だったのに、監督は『それもまた良しです』とおっしゃって淡々と撮影を始められた。そのときに、『なんてカッコいいんだろう! 私もこんなセリフを言える人になりたい』って」

 人生は必ずしもすべてが自分の思いどおりにいくとは限らない。むしろ、他人の意見や不測の事態を受け入れることによって、新たな発見があったり、自分自身の世界も広がっていく。

 「それが分かってからは、肩の力が抜けて生きることが楽しくなりました。人に優しく、自分にも優しく(笑)。そんな柔軟な姿勢で、日々、新たな試みに挑戦し続けていきたいですね」

 年々、ストライクゾーンが広がっていく若村さん。そのしなやかな活躍ぶりを、これからも応援したい。

  • 出演:若村麻由美(わかむら まゆみ)

    東京都生まれ。無名塾出身。NHK連続テレビ小説『はっさい先生』でヒロインとしてデビュー。エランドール新人賞を皮切りに、数々の賞を受賞。最近の連続ドラマ『沈まぬ太陽』『美しき罠』『ホテルコンシェルジュ』他。映画『臨場』『蒼き狼〜地果て海尽きるまで』『月光の夏』他。舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』『リア王』『マクベス』『オレアナ』『テレーズ・ラカン』『令嬢ジュリー』『カリギュラ』他でヒロインを務め、今年は『頭痛肩こり樋口一葉』幽霊花螢役で出演。05年より原典による『平家物語』をライフワークとしている。また、ヒマラヤトレッキングをきっかけに02年より富士山清掃を継続中。

    

公式サイトhttp://tristone.co.jp/actors/wakamura/
    公式ブログhttp://syunca.at.webry.info/

    「原典・平家物語を聴く会 公式サイトhttp://www.heikemonogatari.jp/

    公演情報

    ①舞台「頭痛肩こり樋口一葉」
    2016年8月5日(金)~25日(木)@日比谷シアタークリエ他全国公演
    http://www.tohostage.com/ichiyo2016/

    ②【松本隆の世界~風のコトダマ~】
    ビルボードライブ東京
    2016年9月1日(木)
    1st 開場17:00 開演18:00
    2nd 開場20:00 開演21:00
    http://www.billboard-japan.com/sp/d_news/detail/37331/2

    スタイリスト:岡のぞみ

    スタイリストアシスタント:田口広菜

    <衣装クレジット>
    ニット帽、ニットプルオーバー、文字プリントブラウス、文字プリントスカート(全て ヒロココシノ)
    白スカート( シッタムール/ストックマン)
    白ブラウス(ヨーロピアン カルチャー/ストックマン)
    白ストール(トランジット パーサッチ/トランジット パーサッチ青山店)

    ヘアメイク:長縄真弓

  • 取材/文:内山靖子

    ライター。成城大学文芸学部芸術学科卒。在学中よりフリーのライターとして執筆を開始。専門は人物インタビュー、書評、女性の生き方や健康に関するルポなど。現在は、『STORY』『HERS』(ともに光文社)、『婦人公論』(中央公論新社)などで執筆中。単行本やムックも手掛ける。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/