「太鼓は若者の芸だと言われれば、そうかもしれませんね。上半身裸になって筋肉を見せて、イケメンの青年たちが一生懸命やれば、カッコイイのかもしれない。でも僕が今、この歳でそれと同じことをやれと言われてもそれはできないし、やっても意味が無いと思う」

 ソロ・アーティストになってからはオリジナル作品を次々と生みだし、NYカーネギーホールをはじめ世界各地で公演を重ね、オーケストラや一流アーティストとの競演も数多くこなしてきた。年齢とともに林英哲の太鼓は、衰えるどころか、円熟の境地を迎えているようだ。

「肉体的な衰えは、ありますよ。年代とともに、楽な奏法に切り替わっています。それが良いか悪いか、自分ではわからないけど、でも表現としてクオリティは下げない。昔はエンジン全開で燃費の悪い打ち方をしていたけれど今は、必要な時だけガッとアクセルをふかすだけで、遠くまで行けるようになったんです。若い時とは違う、味わいがある。それが芸能の特質ですから(笑)」

  • 出演:林英哲(はやし えいてつ)

    1952年広島県生まれ。71年『佐渡・鬼太鼓座』の創設に参加。トッププレイヤーとして活動後、81年『鼓童』創成期の演出を担当。82年太鼓独奏者として活動を開始。84年にNY・カーネギーホールデビュー。2000年にはベルリン・フィルと共演。近年では和・洋器楽奏者や伝統芸能の能・歌舞伎等の囃子方、歌舞伎舞踊やコンテンポラリーダンス、バレエのプリンシバルなど、若手アーティストとの共演も多い。今もなおパイオニアとしてジャンルを超えた世界のアーティストやオーケストラと共演しながら、太鼓の新しい音楽を創造しつづけている。CD、DVDなど多数。
    近著に『太鼓日月 独走の軌跡』(講談社刊)ほか。
    2016年には演奏活動45周年、2017年にはソロ活動35周年を迎える。
    オフィシャルサイト http://eitetsu.net

    【コンサート情報】

    林英哲コンサートスペシャル2015(2016年演奏活動45周年前夜祭コンサート)
    『集え! 寿(ことほ)ぎの歌』12月14日(月)Bunkamuraオーチャードホール 開場18:00開演18時30分/特別ゲスト 山下洋輔、上妻宏光
    問い合わせ:東京音協03-5774-3030(平日11:00~17:00)http://t-onkyo.co.jp/

    林英哲コンサート2015
    2015年12月20日 沼津市民文化センター小ホール 開場17:00開演17:30
    問い合わせ:イーストン055-931-8999

    『2016年演奏活動45周年 林英哲 新春スペシャルコンサート2016』
    2016年1月3日 大阪・森ノ宮ピロティホール 12時開場13時開演
    問い合わせ:キョードーインフォメーション0570-200-888

    2016年2月フランス・ナント市で開催されるラ・フォル・ジュルネ出演予定

    2016年11月1日(火)サントリーホールで林英哲演奏活動45周年記念公演、東京公演が決定。

  • 取材/文:岡本麻佑

    国立千葉大学哲学科卒。在学中からモデルとして活動した後、フリーライターに転身。以来30年、女性誌、一般誌、新聞などで執筆。俳優、タレント、アイドル、ミュージシャン、アーティスト、文化人から政治家まで、幅広いジャンルの人物インタビューを書いてきた。主な寄稿先は『éclat』『marisol』『LEE』『SPUR』『MORE』『大人の休日倶楽部』など。新書、単行本なども執筆。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://keitahaginiwa.com/