大学卒業後も、保健体育の非常勤講師と居酒屋のアルバイトをしながらレスリングを続けていた高橋裕二郎選手。生活費を稼ぎながら競技生活を続けるうちに「これではオリンピックどころか全日本チャンピオンにもなれない」と気づき、プロレスラーになることを決意します。

「高校時代から8年間ずっとレスリングに打ち込んできたので、ほかの道は考えられなかった。就職活動としてプロレス入門を選んだのです」

 2003年、新日本プロレスの入門テストに合格。10人ほどの受験者のうち合格者は2人でしたが、結果的に残ったのは裕二郎選手1人です。

 その理由は、寮生活にあったようです。厳しいと言われる新日本プロレスの道場。日体大レスリング部で4年間寮生活を送った裕二郎選手にとって、さほど苦ではなかったようですが、やはり聞いてみると大変そうです。

「練習生は午前中に掃除、練習を済ませて、午後からは1人が食事当番。食事を作るだけでなく、先輩が食べる横にずっと立って給仕をします。先輩は夕方まで入れ替わりで次々食事に来るので、その間お茶を注いだり、話し相手になったり。合間に洗濯や電話当番もします。寮から出られるのは、足りない食材や、先輩の使いで飲み物を買うときだけ。基本、外出禁止です」

 この話を聞いて、食事の席で裕二郎選手の気配りが行き届いていて、しかも身についている理由がわかりました。

 さて、今後は「体作り、試合内容、しゃべり」のトータルでバランスの良いプロレス選手を目指すという裕二郎選手。より優れた肉体づくりのために2年ほど前からボディビルダー相川浩一氏の元でトレーニングを続けているとか。また、体作りのために食生活は基本的に自炊だそうで、無脂肪料理のレパートリーはなかなか幅広いみたいです。

「人生のテーマは“楽しむ”こと。気分が乗らない時間は1分1秒でも作りたくない。自分で納得がいかないままシーズンに入ると試合を楽しむこともできないので、体脂肪や体重、食事制限などコンディションをしっかり整えて試合に臨みます。良いコンディションでいれば、試合以外の取材や、人と会うときにもつねにハッピーな気持ちでいられます」

 テキーラと、おいしいメキシコ料理があればますますハッピー! この日は裕二郎選手行きつけのメキシコ料理店で、身長207cmの紳士、コーディ・ホール選手も撮影に協力してくれました。

ところで、裕二郎選手はヒール(悪役)ということですが、今回の記事は試合で見せる裕二郎選手とはイメージが違うかもしれません。でも、職業上のキャラクターと本人にギャップがあるのは何もプロレスに限ったことではないと思いますが、いかがでしょう。

  • 出演:高橋裕二郎(たかはし ゆうじろう)

    高校時代にレスリングを始め、日本体育大学に進学。全日本学生選手権グレコローマン84キロ級王者に輝く。03年11月、新日本プロレスの入門テストに合格。04年7月26日、後楽園ホールにおける山本尚史戦で、裕次郎としてデビューする。05年11月からアゴの負傷で欠場していたが、06年3月より戦線復帰。5月7日、ZERO1-MAX(現ZERO1)との対抗戦に抜擢され大活躍する。07年6月には「BEST OF THE SUPER Jr.」に初出場し、同大会優勝者となったミラノコレクションA.T.にリーグ戦で勝利した。08年2月、内藤哲也とNO LIMITを結成。10月13日、両国国技館にて稔&プリンス・デヴィットを破り、第22代IWGP Jr.タッグ王者に就く。12月7日、邪道&外道を相手に同王座の初防衛に成功した。09年、内藤とともに海外遠征に出発。CMLLでルード(悪役)としてブレイクし、ヘビー級へ転向。10年1月4日東京ドーム大会で、ブラザー・レイ&ブラザー・ディーボン、ジャイアント・バーナード&カール・アンダーソンとの3WAYハードコアマッチ戦を制し、内藤と共にIWGPタッグ王者に輝いた。同年2月、リングネームを本名の高橋裕二郎に改名。11年5月26日邪道&外道&田中将斗のコンプリートプレイヤーズ入りを表明。同年6月18日大阪で内藤とシングル対決を行ない、快勝を収めた。
    一方で、下ネタを散りばめたマイク、女性を連れての入場など “R指定”キャラとして活躍。
    14年5月3日「レスリングどんたく2014」でIWGP選手権試合に乱入し、王者のオカダを襲撃。CHAOSを裏切りるかたちでBULLET CLUB入りを表明。
    14年6月29日、後楽園大会で石井の持つNEVER無差別級王座に挑戦し、BULLET CLUBの介入もあり、第4代NEVER無差別級王者となった。同年10月13日、両国大会で、石井の挑戦を受け、激闘末最後は石井の垂直落下式ブレーンバスターの前に沈み、王座から陥落した。

    新日本プロレスリング オフィシャル・サイト
    http://www.njpw.co.jp

    取材協力:Qué Rico!(ケ・リコ!)
    http://tacostokyo.com/

  • 取材/文:加藤いづみ

    コピーライター、ディレクター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。広告、SP、WEBのコピーライティング、企画、ディレクションのほか、企業のPR誌制作を手がけている。
    https://www.facebook.com/mi.company

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/