「落語家になるんだったら立川談春のところしかない、と、思い込んでいました。初めて見たのが大学2年のときで、お江戸日本橋亭で『髪結新三』と『らくだ』をやっていたんです。それまでにもいろんな落語家さんの高座を見ていたんですけど、その時初めて落語に圧倒されました。ふつう落語会が終るとお客様は皆がやがやと、面白かったね、なんて笑いながらにこやかに帰っていくじゃないですか。でもあの落語会の終演後はお客さんがみんな黙っていて、日本橋亭の表に出て、そこで初めて深呼吸して、〝はああ-、すごい!〟という。力というか迫力というか重低音というか。今までいっぱい落語は見てきたけど、まったく違うジャンルのすごいものに出逢ってしまった、と思いました。

 でも当時女の落語家は、ほぼいなかったんです。談春の師匠の立川談志師匠は『歌舞伎と同じで落語はすべて男の視線で描いた世界だから、女が演じるのは違う』みたいなことをおっしゃっていましたし、談春も高座で『女に落語はできません』って言い切っていたし。弟子入りを志願しても、十中八九断られるだろう、と。まあ悩んで悩んで、でも人生一度なんで、断られたらそこで考えよう、みたいな。

 そこからは紆余曲折ありまして、結局、弟子入りを許していただきました。見習いとして半年、それから〝こはる〟という名前をいただいて6年半、前座という修行期間です。

 長かったですね。よく、年齢を重ねると時間が経つのが早いって言うじゃないですか。でも前座時代は、やることは多いし師匠は厳しいですから大変で、毎日が非日常なので、時間の経つのがめちゃめちゃゆっくりなんです。鮮明に覚えてます、あの頃毎日何があったのか。20代はそうやって過ぎていきました」

  • 出演:立川こはる(たてかわ こはる)

    1982年10月7日生まれ。東京都港区出身。東京農工大学大学院中退。2006年3月立川談春に入門。2012年6月二つ目昇進。

    撮影協力

    巣鴨庚申塚スタジオフォー
    お江戸日本橋亭

    立川こはる公演情報

    ●「こはるの冬休み~立川こはる落語界~」1月23日(金)19時開演 横浜にぎわい座 http://nigiwaiza.yafjp.org/perform/?p=5852

    ●「道楽亭出張寄席 イキのいいのが五人会」1月28日(水) 19時開演 深川江戸資料館 小劇場 http://dourakute.blog55.fc2.com/

    ●立川こはる勉強会 2月6日(金) 19時半開演 高円寺GALLERYエ+with 03-3313-5065 

    ●立川流二つ目四人会 2月15日(日) 14時開演 調布市文化会館たづくり くすのきホール http://www.chofu-culture-community.org/forms/info/info.aspx?info_id=2050

    ●「桂雀々の大判小判がじゃくじゃく~BS12お宝噺~」(毎週土曜20時~21時放送中)の1月17日オンエア分に出演。再放送は24日・31日

    立川こはる公式ホームページ http://www.tatekawakoharu.com/index.html

  • 取材/文:岡本麻佑

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/