えりんぬさんのプロフィールにはこう書いてある。『シャンソン系シンガーソングライター、時々ピアニスト』。もともとは音大卒のピアニストだった彼女は、歌手の伴奏をするうちに、シャンソンの魅力にハマったのだ。

「大学を出てから、ピアノの弾き語りでライブ活動をしていたんですけど、食べていくためにはいろいろ仕事を探していて。ある時シャンソン教室のピアノ伴奏という形で300曲くらいを一気に弾く機会があり、そこでシャンソンを叩き込まれました(笑)。その後、自分のライブ活動の中にもシャンソンを取り入れたら、お客様の反応がすごく良かったので、これからも歌っていこうかな、と」

 落ち着きのある大人っぽい彼女の美声には、たしかにシャンソンはぴったり! 彼女が大好きという『リヨン駅』は、これからバカンスに出かける女性のモノローグが詞になっているけれど、彼女が歌うと、駅に向うその女性の姿が目に浮かぶ。実は失恋したばかりじゃないかと、聴いてるこちらの脳内では、勝手にドラマが動き出す。

 クリエイターとしてもシャンソンからは、大きな刺激を受けたとか。

「長く残っている、口から口で歌い継がれてきた音楽には、最近の音楽とはまた違う魅力があります。歌詞にも強く弾かれますね。深みがあって、面白い。最近はフランス語の原詩を自分なりに訳して、歌ったりもします。50年以上前に訳されたものが多いので、今の私が歌うときに、生意気かも知れませんが、違和感を覚えることも多いので」

 フランスのシャンソン歌手、バルバラが大好き。自分で作詞作曲し、ピアノの弾き語りで歌うというスタンスは、えりんぬさんも同じだ。

「シンガーソングライターになって、来年で10周年。現在60曲あるオリジナル曲は、ひとつひとつ大切に生みだし、ファンの方達に育ててもらった宝物です。特に歌詞にはこだわっているので、同年代の女性に聴いて欲しいですね!」
 彼女のオリジナルもまた、J-シャンソン、なのかもしれない。

  • 出演:えりんぬ

    国立音楽大学ピアノ科卒。吉祥寺を中心に都内ライブハウスやイベントに定期出演。オリジナル楽曲を元JUDY AND MARYドラマーの五十嵐公太氏が編曲、久住昌之氏原作のテレビ東京『孤独のグルメ』シーズン3&4の音楽に楽曲提供、演奏するなど、幅広く活動している。

    えりんぬオフィシャル・ブログ http://ameblo.jp/erisong-cafe/

    桑山哲也のビストロ”ヌーベル・シャンソン” インフォメーション http://www.horipro.co.jp/kuwayamatetsuya/

    衣装協力:Yohji Yamamoto Inc.

    撮影協力:Royal Garden Cafe 青山 http://www.royal-gardencafe.com/shop_aoyama.html

  • 取材/文:岡本麻佑

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/