20歳のときにデビューして、今年で47歳の誕生日を迎えた若村さん。役者としても、もはやベテランの域。演技に取り組む姿勢も、若いときと比べてやはり変化があるのだろうか?

 「40代はまさに人生の折り返し地点。若い頃は、あれもしたい、これもしたいと、“獲得したい”ことがたくさんありました。その中で様々な出会いがあって、色々なものを手に入れてきた。でもこれからは、これまで自分が手に入れてきたものを振り返る時期なのだと思います。必要なものは手元に残し、要らないものは手放していく。人に渡していく。そういう作業が、仕事でも、プライベートでも必要なんじゃないかと……」

 ちょうど40歳になった頃、「このまま役者を続けていっていいのだろうか?」と、悩んだ時期があったとか。演技の道を志して以来、初めて「演じたい」という欲が湧かなくなった自分に、多いにショックを受けたという。

 「でもね、それから5年近く色々と考えて、“やっぱり役者をやろう!”と、あらためて自分自身に宣言することに決めたんです。それ以来少しづつ、仕事への意欲が湧いてきました。若いときは、“引き受けた仕事でベストを尽くそう”と受け身だったのが、40代半ばからは、自分から新しい試みも発信していくように。普段、いただくようなお仕事ではできない実験的な舞台にも、自らチャレンジするようになりました」

 それが、2011年から始めた『若村麻由美の劇世界』だ。国立能楽堂で琵琶や尺八の調べとともに、平家物語の語り芝居をしたり、狂言師の野村萬斎さんとコラボをしたり。また、今年のクリスマスには、京都造形芸術大学にある春秋座『未来創伝』で語り舞踊「書く女」にも挑戦する。

「まだまだ手探りの状態ですが、人生も後半戦となったこれからは、役者としても、ひとりの女性としても、もっと内面を充実させていきたいですね。人前に立つ仕事ですから、“キレイ”と言われるのはもちろんうれしい。だけど、“これからもずっとキレイでいなきゃいけないの?”とプレッシャーを感じることも(笑)。この年齢になったなら、見た目のキレイさよりも、生きかたの美しい女性になりたい。シミやシワも相応にあって、生きてきた美しさを感じられるような、そんな生き方ができたらと思っています」

 美しきチャレンジャー、若村さんはこれからどんな演技を見せてくれるのか。まずは10月の舞台に大いに期待したい。

  • 若村麻由美

    東京都生まれ。無名塾出身。NHK連続テレビ小説『はっさい先生』でヒロインとしてデビュー。エランドール新人賞を皮切りに、数々の賞を受賞。ドラマ『夜桜お染』『白い巨塔』『Wの悲劇』『鴨、京都へ行く。』『科捜研の女』、映画『蒼き狼~地果て海尽きるまで』『臨場』、舞台『リア王』『マクベス』『カリギュラ』『テレーズ・ラカン』『頭痛肩こり樋口一葉』『鉈切り丸』ほか多数出演。

    最新舞台『ブレス・オブ・ライフ』新国立劇場 10月8日(水)~10月26日(日)、兵庫・兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール 11月1日(土)

    クリスマス特別公演『未来創伝』語舞踊『書く女』京都・京都芸術劇場春秋座12月25日(水)

    公式サイトhttp://www.tristone.co.jp/
    公式ブログ http://syunca.at.webry.info/
    『ブレス・オブ・ライフ』公式サイトhttp://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/141001_003729.htm
    『未来創伝』公式サイトhttp://thinkplus.heteml.jp/miraisouden.com/
    「原典・平家物語を聴く会」公式サイトhttp://www.heikemonogatari.jp/
    「富士山クラブ」公式サイトhttp://www.fujisan.or.jp/

  • スタイリスト:岡のぞみ

    アシスタント:日吉奈緒子

    衣装協力:
    ライダース
    NINA KAUFMANN
    ( クールカレアン 03-5740-2734 )http://c-c-an.com/

    チョーカー
    Siste”s
    ( クールカレアン 03-5740-2734 )http://c-c-an.com/

    バングル
    imac ( 03-3409-8271 )
    http://www.imac-j.com/

    ヘア:土屋雅之(Aio-N GINZA) 

    メイク:森下真奈美(Aio-N GINZA) 

    http://www.aio-n.com/

    取材・文:内山靖子

    ライター。成城大学文芸学部芸術学科卒。在学中よりフリーのライターとして執筆を開始。専門は人物インタビュー、書評、女性の生き方や健康に関するルポなど。現在は、『STORY』『HERS』(ともに光文社)、『婦人公論』(中央公論新社)などで執筆中。

  • 撮影:萩庭桂太

    1966年東京生まれ。東京写真専門学校卒業後、フリーランス・カメラマンとして活動開始。
    雑誌、広告、CDジャケット、カレンダー、WEB、等幅広いメディアで活動中。
    ポートレート撮影を中心に仕事のジャンルは多岐にわたる。
    「写真家」ではなく「写真屋」、作家ではなく職人であることをポリシーとしている。
    雑誌は週刊文春など週刊誌のグラビア撮影を始め、幅広い世代の女性ファッション誌の表紙を撮影中。
    http://www.haginiwa.com/