ミュージカル『ピーターパン』といえば、1981年から毎年夏に上演されている、日本でおなじみの演目の一つ。2013年からその9代目ピーターパンとして主演を務めているのが、唯月ふうかちゃんだ。彼女は12年の「ホリプロタレントスカウトキャラバン」で審査員特別賞を受賞し、翌年には弱冠16歳でピーターパンに抜擢されたというから、すごい。

「まさかホリプロに入ってすぐに大きな舞台の主役をいただけるとは思っていなくて……。最初ウェンディの役かと思っていたけど、まさかのピーターパン役で。え、男の子? できるの? と家族もビックリして」

 そう、普段のふうかちゃんは、サラサラロングヘアーで、ふわふわファッションが似合う可愛らしい女の子。アルパカが好きで、ぬいぐるみやスリッパ、ポーチなど、アルパカグッズを集めているという。そうか、アルパカが好きなのか。では、動物園にいる本物は?

「本物はあまり好きじゃない……。大きくて顔が人間みたいでこわいし。ぬいぐるみなら好きなんです」

 なんだか腑に落ちない気もするけど、女の子は可愛いものだけが好きなのです。

 ふうかちゃんは昨年、ピーターパンを演じるにあたって、初めてショートヘアを体験した。といっても、髪を切ったわけではなくウィッグを着けて。

「別人みたいになるので、ウィッグをつけるとスイッチが入ります。普段の自分らしい、女の子っぽい仕草をすると、むしろ恥ずかしいと思って。それならいっそ男の子らしくしよう、大胆にしよう、と心がけています」

 誰にでも変身願望はあるもの。普段の自分とはガラリと違う姿で舞台に立つことを楽しんでいるようにも見える。

「ピーターパンでショートヘアになるのは楽しいです。普段はロングヘアですから、駅などでポスターが貼ってある前を通っても、誰も気づかないし(笑)」

 インタビューは『ピーターパン』のフライング稽古の合間に行なわれたため、ピーターパンに扮したふうかちゃんに話を聞いた。ロングヘアの少女と、目の前にいる少年がなかなか一致しない。しかも、透き通るような声はまぎれもなく女の子なのだから、なんとも不思議な感覚を味わうことになった。

 さて、デビューの翌年に大役をつかんだふうかちゃんとは、一体どんな女の子なのか? 「唯月ふうか」が生まれるまでについて、話を聞いてみた。

  • 唯月ふうか

    1996年北海道出身。2012年に行われた「37thホリプロタレントスカウトキャラバン2012」で演技力と歌唱力が高く評価され、審査員特別賞を受賞。9代目ピーターパンとして、昨年に引き続き本作品に出演。ホリプロタレントスカウトキャラバンの出身者としては、榊原郁恵以来2人目のピーターパン役抜擢となる。主な出演作に、舞台『女海賊ビアンカ』主演ビアンカ・カスターニ役、TV『マトリの女 厚生労働省 麻薬取締官』(テレビ東京)レギュラー・神木春音役、『死神くん』(テレビ朝日)第7話ゲスト・中野亜美(AMI)役など。毎週金曜日24:30からオンエアされている『唯月ふうかのFFFのF(ふふふのふ)』(FM-FUJI)ではDJを務める。11月からミュージカル『アリス・イン・ワンダーランド』にクロエ役(青山劇場、梅田芸術劇場、中日劇場)で出演。

    『ピーターパン』公式サイト http://hpot.jp/stage/peter2014
    唯月ふうか公式ブログ http://ameblo.jp/fuka-yuduki/

  • 取材・文:加藤いづみ

    コピーライター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。広告、SP、WEBのコピーライティング、企画のほか、1996年より某企業のPR冊子(月刊)制作を継続して手がけている。
    https://www.facebook.com/mi.company

撮影:萩庭桂太