『ピーターパン』といえば、日本で初めてフライングを取り入れた舞台として知られている。取材の前に、その稽古風景を見せていただいたが、とにかく高い! 縦横無尽に恐れ気もなく空中を飛ぶ、ふうかちゃん。飛んでいるときは、どんな気持ちですか?

「ほんとにもう気持ちいいですよ! 鳥になったみたいな感じで、もっと長く飛んでいたい! と思います。お客さんが小さく見えて、暗い中で手を振ってくれる子どもの姿も上から見えます」

 軽やかに、楽しげに飛んでいるピーターパンだが、稽古場では舞台の場面ごとに綿密な段取りが行なわれていた。役者の芝居、衣裳、ワイヤーの動き、そのすべてが合致しなければ成立しない。子ども向けミュージカルと言われているが、おとぎ話を演じるには壮大な仕掛けが必要になるのだ。

 そんな緊張感に満ちた舞台だが、そこは劇場で演じられる生のお芝居。ときには、ハプニングも起こる。

「一回ステージに立ったら、誰も助けてくれない。去年は、ティンカーベルに話しかけるところを『ウェンディ』と間違えてしまって。前の席のお客さんが気づいて『え? ウェンディ?』って言っているのが聴こえたんですけど、“僕は間違っていない!”って目力でみんなに伝えて、芝居を続けました」

 どうやら舞台度胸も充分にあるようで、とても2年目と思えない頼もしさ。デビュー以来、この『ピーターパン』のほかにも、『ガラスの仮面』の劇中劇を舞台化した『女海賊ビアンカ』、ドラマ『死神くん』、ラジオ番組やバラエティ番組など、着々と活躍の場を広げている、ふうかちゃん。11月にはミュージカル『アリス・イン・ワンダーランド』への出演が決定している。

「これからも、いろいろなことに挑戦してみて、『これが一番、自分らしくできるな』と思うものを見つけたいですね。もともと歌が好きなので、ドラマや映画に出演して、その主題歌を自分で歌う、というのが夢です。そして、榊原郁恵さんみたいに長ーく芸能界で活動していけたらいいな、と思います」

 スケジュール表にたくさん予定が書いてあることに憧れる、というふうかちゃん。すでに今年のスケジュール表はかなり埋まりつつある。小柄な体と可愛らしい声からは想像できないような秘めたるパワーで、活躍の機会は着々と増えていくことだろう。

  • 唯月ふうか

    1996年北海道出身。2012年に行われた「37thホリプロタレントスカウトキャラバン2012」で演技力と歌唱力が高く評価され、審査員特別賞を受賞。9代目ピーターパンとして、昨年に引き続き本作品に出演。ホリプロタレントスカウトキャラバンの出身者としては、榊原郁恵以来2人目のピーターパン役抜擢となる。主な出演作に、舞台『女海賊ビアンカ』主演ビアンカ・カスターニ役、TV『マトリの女 厚生労働省 麻薬取締官』(テレビ東京)レギュラー・神木春音役、『死神くん』(テレビ朝日)第7話ゲスト・中野亜美(AMI)役など。毎週金曜日24:30からオンエアされている『唯月ふうかのFFFのF(ふふふのふ)』(FM-FUJI)ではDJを務める。11月からミュージカル『アリス・イン・ワンダーランド』にクロエ役(青山劇場、梅田芸術劇場、中日劇場)で出演。

    『ピーターパン』公式サイト http://hpot.jp/stage/peter2014
    唯月ふうか公式ブログ http://ameblo.jp/fuka-yuduki/

  • 取材・文:加藤いづみ

    コピーライター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。広告、SP、WEBのコピーライティング、企画のほか、1996年より某企業のPR冊子(月刊)制作を継続して手がけている。
    https://www.facebook.com/mi.company

撮影:萩庭桂太