NHK朝の連続テレビ小説が始まったのは1961年。もちろん私は生まれていないが(強調しておこう……)、物心ついたときから、我が家でも「朝ドラ」は食パンのトーストと同じくらい、そこにあるものだった。

 強烈な印象が残っているのは74年『鳩子の海』である。原爆から命からがら逃げ、親を失った子どもを演じる斎藤こず恵が健気で愛らしかった。当時、私はもう小学校に通っていたのでたぶん最初の5分くらいしか見られなかった気がするのだが「戦争で親を失う」ということがひどくリアルに迫ってきて、土曜の昼は学校から一目散に帰ってきて、午後0時45分からの放送を見ていたのを覚えている。結局、そこから吉本新喜劇か松竹新喜劇を見てげらげらと笑い、大阪の下町の現実に引き戻されるのであったが。

 この連載のデスクのIさんの勤勉さに感化されてちょっと調べてみると、過去の放送期間平均視聴率の1位は83年の『おしん』で52.6%。2位が71年の『繭子ひとり』で47.4%。続いて72年の『藍より青く』で47.3%。『鳩子の海』は47.2%の4位であった。

 国民の半分が朝ドラを見ていた、ということになる。

 今年上半期、あんなに人気で終了後にペットロスならぬ「あまロス」という言葉まで出た『あまちゃん』であったが、実は放送期間平均視聴率ということで見ると20.6%なのである。

 かくいう私は『あまちゃん』の面白さは今ひとつわからなかった。面白くなくはないのだが、すべてがものすごい予定調和の上に成り立っている会話で、しかもそのことに誰も気づいていない感じがした。基本的に人の心の痛いところには決して踏み込まないやさしさの上に成り立っている、とでも言おうか。

 もっとわかりやすく言えば「地方と東京」の常識の上に成り立っている人間関係だったのだと思う。

 だから、大阪人のように、土着的で人と人が「私はこうやねん」をぶつけあっている人間から見れば、なんとなく「ゆるい」感じが否めなかった。関西での視聴率が東京ほど伸びないという話を聴いて、やっぱりなあと思ったものだった。

 そこへ次のNHK大阪制作『ごちそうさん』である。東京の下町の洋食屋の娘がこてこての大阪に嫁いでくるという話だ。

 主演は杏さん。ちょうどレギュラーで書かせていただいている『ミセス』の「表紙の人」というインタビューで、彼女から『ごちそうさん』の背景となる大正末期の大阪について話を聴くことができた。なんでも当時の大阪は東京よりも人口が多く、文化的にも先を行っていたのだそうだ。

 そんな華やかなりし大阪。食いしんぼうのヒロインが食で人間関係を作っていく物語だというのだから、期待しないわけがない。

 しかもそこに、昨年このYOUR EYES ONLYに登場してくれた、高畑充希ちゃんが出演するというではないか。充希ちゃん、どんな役なんだろ?

 私は『鳩子の海』に見入った頃の気持ちをわくわく思い出しながら、『ごちそうさん』を見始めたのであった。

  • 出演:高畑充希

    1991年大阪府生まれ。2005年、ミュージカル『プレイバック part2~屋上の天使』で主演デビュー。07年からはミュージカル『ピーターパン』で8代目ピーターパンとして6年間演じるほか、「みつき」名義で歌手としても活動。主な出演作に舞台『奇跡の人』、ミュージカル『スウィーニー・トッド』、映画『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』『ドルフィンブルー フジ、もういちど宙へ』、ドラマ『3年B組金八先生』『ナツコイ』『Q10』など。現在、NHK朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』にヒロイン杏の義理の妹、希子役でレギュラー出演中。

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

  • ヘアメイク:西田裕美子

    数店舗の美容室で経験を積んだ後2002年にヘアメイクに転向、ヘアメイク事務所Deuceに所属。やさしい人柄であたたかく誠実な仕事ぶりには定評がある。女性らしく明るい、透明感のあるメイクが得意。現在CDジャケット、PV、TVやショーを中心に活躍中。

撮影:萩庭桂太