高畑充希ちゃんは役者であると同時に大学3年生でもある。

「今は半年、休学中です。おばあちゃんに『どうにか卒業してちょうだい』って言われていますから、頑張ります。友達は就職が決まり始めてバカンスって感じですねえ」

 友達から進路について相談されることも多かった。

「みんな就活になると、友達だけどどこかライバルでもあるわけですよね。役者という仕事がある私は、そこでは第三者なので相談しやすかったみたいです。今までふわっとしてたみんながやるときはやるんだなあ、と実感しました。髪を黒く染めて、リクルートスーツを着て。『前髪は流すほうがいいのか上げるほうがいいのか』なんて話し合っていて。みんなまったく同じスタイルになって。そうかと思えば、そういう流れにはまりたくなくて、突然海外に行っちゃったり、個人経営の会社を選んだりする人もいました。いろんな生き方があるなあと思いました」

 充希ちゃんはもうずいぶん前から女優で生きると決めていたのでしょう、と尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「いや、女優でやっていこうと本当に決めたのは1年前くらいです。それまでは実家という帰るところがあるし、と思っていた。実家もダメだったと戻ったら甘やかしてくれそうだし。大阪で就職するよ、と言ったら『いいよ』と言ってくれそうな空気があったし。でも私自身、オーディションを受けるうちに、ちょっとずつ、私には需要があるなと感じ始めたんです。そう思ったら『帰る場所がある』なんて言ってる場合じゃないな、と思い始めた。今回、実家に帰って家族とその話をしたら『えっ、ずっと前から覚悟してたんじゃないの』と言われました」

 もちろん、彼女の覚悟をまた強く後押ししたのは『ごちそうさん』のオーディション合格だったのは言うまでもない。

「決まったとき、最初に監督とプロデューサーに『期待してます』と言われて、爪痕を残さないとな、と思いましたね」

 きりり、という顔つきになった。女優として生まれる人はいない。仕事が彼女を女優にしていくんだなあ、と思った。

  • 出演:高畑充希

    1991年大阪府生まれ。2005年、ミュージカル『プレイバック part2~屋上の天使』で主演デビュー。07年からはミュージカル『ピーターパン』で8代目ピーターパンとして6年間演じるほか、「みつき」名義で歌手としても活動。主な出演作に舞台『奇跡の人』、ミュージカル『スウィーニー・トッド』、映画『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園』『ドルフィンブルー フジ、もういちど宙へ』、ドラマ『3年B組金八先生』『ナツコイ』『Q10』など。現在、NHK朝の連続テレビ小説『ごちそうさん』にヒロイン杏の義理の妹、希子役でレギュラー出演中。

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

  • ヘアメイク:西田裕美子

    数店舗の美容室で経験を積んだ後2002年にヘアメイクに転向、ヘアメイク事務所Deuceに所属。やさしい人柄であたたかく誠実な仕事ぶりには定評がある。女性らしく明るい、透明感のあるメイクが得意。現在CDジャケット、PV、TVやショーを中心に活躍中。

撮影:萩庭桂太