2014年に創立75周年を迎える、ジャズの老舗レーベルBLUE NOTE。どこの国でも老舗が生き残るためには常に変革が必要なようである。

 この連載で、昨年紹介したホセ・ジェイムズも新風吹くBLUE NOTEのアーティストであった。今回はそのときのコーディネートをしてくれた木村真理さんから、今度は日本人がBLUE NOTEから出すのだというメールをもらった。

「松浦俊夫 presents HEX。11月20日にBLUE NOTEからアルバム『HEX』が出ます」

 松浦俊夫、という響きになんとなく見覚えがあったものの、彼が20数年前にUnited Future Organization(U.F.O.)というプロジェクトでクラブ・ミュージックの始祖となったこと、にまではすぐには思い至らなかった。

 HEXはプロジェクトである。集められたミュージシャンたちは皆若い。キーボード&プログラミング&コーラスに佐野観。ドラムスにSOIL&"PIMP"SESSIONSのみどりん。ピアノが伊藤志宏。ベースに小泉P克人。

 ゲストボーカルにはEGO-WRAPPIN’の中納良恵、ブラジルからエヂ・モッタ、ニューヨークからグレイ・レヴァレンドが参加している。

 萩庭桂太に相談すると、彼は二つ返事で写真を撮りたいと言った。U.F.O.からのファンで、当時、撮影中のスタジオで、大音響でCDをかけていたのだそうだ。都内のスタジオのスピーカーを数台壊したと白状した。

 Youtubeを検索すると、松浦俊夫のリミックスした『ルパン三世』もあった。映画『カリオストロの城』でのラストの台詞がリミックスしてある。

「……あの方は何も盗んではおられません」

「いえ。あいつはとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です」だったかな、あの銭形警部のひと言で、曲が始まる。

 何これ、と私はつぶやいた。格好良過ぎる。

 モノクロのアーティスト写真の寡黙な横顔が、また格好良さを醸し出していた。ある程度の年齢を重ね、なおかつ湛えている、格好良さ。

 「格好良さ」ってなんだろう、と私は思った。

 おそらく流行とともに「格好いい」は変化していくが、朽ちない「格好良さ」というものがあるとしたら、それはなんだろう。

「朽ちない格好良さは、存在する」

 それは幾何の証明問題のように、私の心に仮定を与えた。

  • 出演:松浦俊夫

    1990年、United Future Organization (U.F.O.)を結成し、日本におけるクラブ・ミュージックを先駆ける一人となる。12年間で5枚のフルアルバムを32カ国で発売、高い評価を得た。02年の独立後も世界中のクラブやフェスティバルでDJを続け、幅広いジャンルのアーティストのリミックスを手がける傍ら、ファッションブランドの音楽監修なども行う。また、イベント・プロデュース、コンサルティング、アーティストのエージェント業務などを通し、幅広い人脈を築く。
    http://toshiomatsuura.com
    http://www.hex-music.com

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太