HEXの楽屋で
松浦俊夫
- Magazine ID: 1356
- Posted: 2013.11.26
11月1日。東京・恵比寿のリキッドルームで開催される『WORLDWIDE SHOWCASE』でHEXのライブが初めてお披露目されるという。
萩庭桂太と私は、開演前の楽屋にお邪魔させてもらえることになった。撮影のために全員が揃うのはここだけであろうということになったからである。
私は自分が長らくバンドをやったり歌っていたりするので、ライブが始まる前の楽屋の感じ、というのにとても感情移入できる。
昂揚感というか、落ち着かないというか、本番のためにパワーを高めていく過程というか、演奏する一人ひとりが様々な感情を見えない電気のように発している。それが互いにぶち当たって火花を散らしたりしないように、ほどほどの距離感をもって、しかし意識し合っているという状況だ。
「はーい、撮影ですよ! 全員いらっしゃいますかー」
ユニバーサルミュージックの斉藤さんが声を掛けるたび、誰か一人、必ずいない。
「××さんがトイレです~」
うだうだとしているようで、緊張感は半端ではない。
やがて、全員が並ぶと、なんともまた不思議な空気感が漂う。演奏でもないのに、なぜこうして一緒に並んじゃってるんだろうという感じである。
「あー。オレ、こうして並ぶの、結婚式以来かも」
「その頃はうちに帰ってたの?」
「うん。ちゃんと帰ってSEXしてた」
どっと笑いが起こり、松浦俊夫が言う。
「本番はトーク一切禁止!」
というわけで、本番のステージに現れた彼らは、楽屋の空気を一切まとっていなかった。
COOLで男っぽい。圧倒的な存在感から、音が溢れ出した。
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出演:松浦俊夫
1990年、United Future Organization (U.F.O.)を結成し、日本におけるクラブ・ミュージックを先駆ける一人となる。12年間で5枚のフルアルバムを32カ国で発売、高い評価を得た。02年の独立後も世界中のクラブやフェスティバルでDJを続け、幅広いジャンルのアーティストのリミックスを手がける傍ら、ファッションブランドの音楽監修なども行う。また、イベント・プロデュース、コンサルティング、アーティストのエージェント業務などを通し、幅広い人脈を築く。
http://toshiomatsuura.com
http://www.hex-music.com -
取材・文:森 綾
1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影:萩庭桂太