「……で、今回の役者さんは何に出ていらっしゃる方ですか」

 電話口で私が尋ねると、萩庭桂太はうれしそうに言った。

「仮面ライダー」

「えっ」

 仮面ライダーと言えば、すぐに初代の仮面ライダーに変身する本郷猛こと藤岡弘、が脳裏に浮かんでしまう。この猛暑にかなり暑苦しい映像だ。

 1971年に始まったあの作品を、私は2つ下の弟とともに見ていた。観終わると弟は興奮し、とぉーっ、と唸って殴りかかってきた。まあ、当時の男子たちは皆、勝手に首におかあさんのスカーフを巻いて自転車で爆走しては叱られたものである。

 しかし昨今の「仮面ライダー」シリーズに出てくる若者たちはかなりあっさりした男前揃いだ。ある種、新人俳優の登竜門のようになっており、そこからオダギリジョー、佐藤健、福士蒼汰といった錚々たる人気男優が輩出されていることは周知である。

 ひょっとしたらすごいイケメンに会えるのかもしれないと一瞬わくわくしたが、次の瞬間、ハギニワはまた意外なことを言った。

「今の『仮面ライダーウィザード』で、悪役やってる女のコなんだ。中山絵梨奈ちゃんと言う名前で、可愛いよ」

「はあ……」

 悪役? 女のコで? 可愛い? ……何か符合しない言葉が耳にどんどん入ってきた気がする。百聞は一見にしかず。私は日曜日の朝8時に起きて『仮面ライダーウィザード』を見ることにした。

  • 出演:中山絵梨奈

    1995年千葉県生まれ。2008年、雑誌nicolaのモデルオーディションでグランプリに。同年10月から2013年10月までメインモデルとして活躍。その後、女優に転向、09年3月公開の映画『あとのまつり』で主演デビュー。現在、『仮面ライダーウィザード』のほか、CMや映像に引っ張りだこである。
    http://www.stardust.co.jp/profile/nakayamaerina.html
    公式ブログ http://www.star-studio.jp/n-erina/

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太