もともと中学1年のときから雑誌のモデルをしていた絵梨奈ちゃんは、高校1年いっぱいでそれを卒業。演技をメインにすることに決めた。それと同時に『仮面ライダーウィザード』のオーディションに合格。

「『敵の幹部役に選ばれたから』と言われたときはちょっと驚きました。オンエアまで1年あるから、がんばってね、と」

　問題は悪役に見えづらい可愛らしさだった。

「悪役って大人っぽくないといけない。目元とか口元がアップになって、にやり、と悪そうに微笑むとか。要するに色気がいるんですよね。高校生の私がどうやったら色気を出せるのか。『その笑い方じゃ可愛過ぎー』とダメ出しされちゃう。声だけのアフレコを録るときも『迫力ないね』と言われたり。あまりにもできない。泣いてどうなるものじゃないけど、できない自分が口惜しくて泣きました。そして必死に努力しました、独学で色気を身につけようと」

　うーん。独学で色気は無理。恋でもすればいいのではないかしら。……いつものインタビューなら、私は当たり前のようにそう言ったと思う。でも私はこのたびはそれを言葉にできなかった。なぜなら目の前にいる絵梨奈ちゃんが、本当にまっさらな感じで、本当に演技に対して必死そうだったから。なんだかそんな質問を投げかけることですら、彼女を汚しそうな気がしたからである。