何年か前にバレエ界の異端児と言われるマシュー・ボーンが演出した「スワン・レイク」という舞台を観たことがある。白鳥を踊るのは男性のみ。「白鳥の湖」とはいうものの、ストーリーには大きなアレンジが加えられ、不思議なものだった。しかし見ているうちに得も言えない、切ない感情がわき上がってきた。ストイックに鍛え上げられた男性たちの肉体の、抑制してもしきれないセクシーさが、妙に胸に迫るのだ。

 こんなものを形にしてしまうマシュー・ボーンとは、いったいどんな人なんだろう、と思ったものだ。

 その演出家、マシュー・ボーンに見いだされ、日本人として初めて彼の舞台で主演を演じる男性。それが今週登場する大貫勇輔なのである。

 まず大貫に、ロンドンでのオーディションの様子を聞いた。

「実際に劇場の上で、今回の舞台『ドリアン・グレイ』の振り付けを踊るんです。オリジナルキャストのリチャード・ウィンザー氏が約1時間くらいかけて教えてくれて、2曲踊りました。1曲目が終わったときは『パッショネイトだからドリアンよりも相手役の方かな』と言われたそうですが、自分の美しさに酔いしれるという2曲目では『セクシーな感じもいけるね』と。客席に座っていた物腰柔らかなふわっとした男性が、マシュー・ボーン氏だったんです」

 7月11日からのBunkamura オーチャードホールでの舞台に向け、6月から本格的な稽古が始まる。

「まだどういうふうに演じようかとはそんなに考えていません。大きなチャンスだと思っていますので、言われたことに何でも対応できる肉体をつくって臨もうと思います」

 180センチの長身。厚過ぎず薄過ぎない胸板。しなやかな四肢。彼を育て上げた場所は、実は実家のダンススタジオだという。

 萩庭桂太と私は、大貫勇輔の故郷、相模大野に向かった。

  • 出演:大貫勇輔

    1988年神奈川県生まれ。7歳よりダンスを始め、17歳からプロ・ダンサーとして数々の作品に出演。ジャズ、バレエ、ストリート、アクロバット、コンテンポラリーなど多岐にわたるジャンルのダンスを踊りこなす。ドラマやCMへの出演も多く、昨春、舞台『キャバレー』で藤原紀香の相手役を務め、話題になる。7月11日~15日、東京渋谷Bunkamura オーチャードホールで上演される『ドリアン・グレイ』(マシュー・ボーン演出)で主役を演じる。

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太