駅からタクシーに乗って10分。200人以上の生徒がいるというダンススタジオは、体操教室やスポーツクラブも併設されており、土曜日のその日は「街中の子どもたちが来ているのでは」と思えるくらいにぎわっていた。

 大貫勇輔が指導する、ヒップホップ上級者のクラスが始まった。小学校の低学年から上は中学生くらいまでの子達が踊る。

「いつもの感じで、できなくても全力でついて来てください!」

 大貫は子どもたちの目を見て呼びかける。身体を触らせて筋肉の動きを教え、できない子どもたちを見つけてはさっとそばに近寄って振り付けを確認する。

 ダンスというのは指の細部の動きから始まる。手の動きがきれいな子は背中の動きも美しい。背中の動き、特に肩甲骨が柔らかい子は腰の動きがとてもきれいだ。身体の中心がキープされながら全身が動いていくさまに、私は感動を覚えた。1時間半のレッスンの最後にはほぼ全員が、難しい振り付けを覚えて踊った。

 その昔「熱中時代」という水谷豊主演の教師ものドラマがあったが、あのダンス教師編を彼を主役にして作ったらどうだろうか、とふと思った。

 それほどに生徒たちは大貫先生を慕っているのである。

  • 出演:大貫勇輔

    1988年神奈川県生まれ。7歳よりダンスを始め、17歳からプロ・ダンサーとして数々の作品に出演。ジャズ、バレエ、ストリート、アクロバット、コンテンポラリーなど多岐にわたるジャンルのダンスを踊りこなす。ドラマやCMへの出演も多く、昨春、舞台『キャバレー』で藤原紀香の相手役を務め、話題になる。7月11日~15日、東京渋谷Bunkamura オーチャードホールで上演される『ドリアン・グレイ』(マシュー・ボーン演出)で主役を演じる。

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太