モムチャンになりたい
チョン・ダヨン
- Magazine ID: 1509
- Posted: 2012.12.03
『モムチャンダイエット』のチョン・ダヨンと言えば、ダイエットを気にする40代の女性のほとんどが知るところではないだろうか。「モムチャン」とは韓国語で「健康で美しい体」の意味。
このメソッドを考案したチョン・ダヨンはダイエット界に「40代の美しいくびれ」旋風を巻き起こした1人だ。この本、日本ではなんと70万部のベストセラーで、今や中国、台湾、シンガポールなど、アジア全土に広がろうとしている。かくいう私も彼女の本を愛読していた1人である。いや、本当は愛読しているだけではダメなのだ。彼女が提唱するエクササイズを毎日続けてこそなのである。
本によると、この人、現在46歳、二児の母。33歳のとき、70キロを超えていた体重を30キロ近く落とすダイエットに成功し、年々、若さを増しているという。彼女のポリシーは体重という数値そのものではなく、いかに女性らしく、すっきりとムダな脂肪を削ぎ落し、老化を遅らせるかというもの。食べて運動して痩せる健康的なダイエットだ。しかし、そんなことが本当にできるのだろうか。
私がそんな疑問をもつのは、私本人が、もはや本当に痩せづらくなってきたからだ。37歳のとき、47キロまで落ちたのは、寝る前の簡単な体操と断酒であった。あれから10年。どこがどう突出しているわけではないのに、なんだか全体に丸くなってきたことにある時気づいた。お風呂から上がってきて鏡を見ると、背中が昔と違う。下着の跡が赤くついていて、これはどうしたもんか、と驚いた。
早速、翌日、デパートの下着売り場に行くと、妙齢のおねえさんがニコニコとやって来て、試着室に放り込まれた。
「お客様、サイズが合っていません」
そういえば、10代の頃と同じアンダーサイズで30年くらい来た気がする。
「5センチあげましょう」
確かにそれで少し楽にはなったが、まだ脇のあたりにぷくぷくした物が……。こ、これが「はみ肉」か。
おねえさんはとんでもないことを言い出した。
「全部、入れてしまいますからね」
「えっ、どこにですか」
「これは全部、バストにしてしまいましょう」
「は…」
「失礼します!」
鏡に向かって前屈みにさせられた私は、おねえさんに胸を押し上げられた。ぐいぐい、と背中から脇にかけてのお肉がカップに詰め込まれる。
直立姿勢に戻ると、生まれて初めて見る谷間ができていた。
「いかがですか。2カップ上がりまして、Eカップのお胸になられました」
「……しかし、こ、これは……、脱げば、元に戻りますよね」
「毎日、この状態でいますと、ある程度、その位置はキープされるものなんですよ」
「……そ、そんなもんですか」
急にプチ巨乳になった私はなんとなくぎこちなく同じサイズのものを2つ買って銀座の街を歩いた。
なんだか苦しい。苦しいがとりあえず頑張らなくちゃ。
しかしこれ、なんだか詐欺っぽくないか。
「私、脱いだらすごいんです」というコピーがあったが、これじゃ「私、脱いだらしょぼいんです」になるではないか。
かくして私はまた『モムチャンダイエット』の表紙のチョン・ダヨンのくびれを見て、ため息をつくのであった。
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出演:チョン・ダヨン
1966年、韓国生まれ。03年、自らのダイエット経験をインターネットで公開し、一躍話題に。韓国語で「最高の体」を意味する「モムチャン」という言葉を生む。ジムを運営しつつ、トレーナーの養成塾も設立。日本においても『モムチャンダイエット』始め、数々の本をベストセラーに。
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コーディネーター:木山善豪
アジアエンタテイメントのコンサルティングを核とし、中国語圏のエンタメビジネス全般のサポートを手がける。美容関連のポータルサイト「bimajin」も立ち上げたばかり。
[OFFICE303] ENTERTAINMENT&MODEL http://www.office303.jp
Bimajin ~美容ポータルサイト"ビマジン"~ /bimajin.jp -
取材・文:森 綾
大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810
撮影:萩庭桂太