ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』を観た。子どもを連れた家族連れで会場は満杯である。始まる前から泣く子はいるわ走り回る子はいるわ。

 しかし舞台が始まると、みんなそちらにひきつけられて静まり、集中し始める。夢のある美しいセットと衣装、本物の演技とダンス。メロディの美しい歌。

「ミュージカルは突然歌い始めるから気持ち悪い」と言う人がいるが、そういう気持ち悪さとはまったく無縁。展開の速さもあるが、大人も楽しめるポイントが多いからなのだろう。子どもたちは退屈している暇がない。

 徐々に劇に引き込まれていく子らの興奮度は、キャストが舞台を降り、客席に押し寄せるようにやってきた後、最高潮に達する。ラストシーン間際、ピーターパンが壁の上にいて、ウェンディが「ピーターパンはどこへ行っちゃったの」とさびしがるシーンでは、観客の子らは一斉に「後ろにいるよ」「後ろだってば」と、心の底から叫ぶのである。

 小さい頃からケータイをもったりパソコンをいじったりする時代になっても、子どもは子どもなんだなあと、なんだかほっとする。

 ふと隣りの座席を見ると、フック船長が剣を振り回すたびにやたらと身をかわしている萩庭桂太がいた。やはり、フォトグラファーにはこのテの若さが大切なのかもしれない。

 さて、今週登場するのは1998年の『ピーターパン』に史上最年少の13歳で主演した、笹本玲奈さんである。すくすくと成長した玲奈さんも今や27歳。現在、全国11都市で順次公演の『ミス・サイゴン』の、キム役を堂々演じているという。

「YOUR EYES ONLY」のようなプライベートっぽい顔を見せる取材は初めてだという彼女は、この日をとても楽しみにしてくれていた。

  • 出演:笹本玲奈

    1985年千葉県生まれ。O型、ふたご座。バレエ、タップ、ジャズとダンスは大好き。98年史上最年少でミュージカル『ピーターパン』主演デビュー。07年に菊田一夫演劇賞、08年に第15回読売演劇大賞優秀女優賞、および杉村春子賞受賞。現在、全国11都市で公演の『ミス・サイゴン』にキム役で出演中。
    http://fc.renasasamoto.jp/

  • 取材・文:森 綾

    1964年8月21日大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1200人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には女性の生き方についてのノンフィクションが多い。『キティの涙』(集英社)の台湾版は『KITTY的眼涙』(布克文化)の書名で現在ベストセラー中。
    http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太