「一筆書きのイメージで演奏してみました」

 新作『サムシン・ブルー』を山中千尋はふり返る。クラシック、民謡、ビートルズ……など、山中の近作はほかの作家の作品を中心に演奏してきた。

 『サムシン・ブルー』は11曲中8曲がオリジナル。オリジナル中心のアルバムは久しぶりだ。

「楽曲はアルバムのリリースにかかわらず作っています。ただし、完成品ではなく、モチーフです。それを組み合わせ、練りに練っていくと、どうしても、頭でっかちというか、理論的な音楽になりがちです」

 音楽教育を受けた音楽家の興味をひいても、一般リスナーには難解な音楽になってしまうリスクがある。

 山中はそれを避けたかった。

「だから、精密に作った曲をできるだけシンプルにしていく作業を重ねていきました。あるいは、たとえていえばアドリブを演奏するように一気に作曲して、それを一気に演奏するように努めました。『サムシン・ブルー』は、歌うように、フィジカルを意識してつくった作品です」

 9月にはブルーノート東京で『サムシン・ブルー』のライヴが決まった。

 このアルバムの曲をほぼ同じメンバーで演奏するプランだ。一筆書きの演奏が再現されることになる。

『サムシン・ブルー』

2014年7月16日発売
通常盤¥2,800+税 初回限定盤(CD+DVD)¥3,500+税
http://www.universal-music.co.jp/chihiro-yamanaka

  • 山中千尋

    福島県生まれ、群馬県育ち。ジャズピアニスト、作曲家、アレンジャー、プロデューサー。米ボストンのバークリー音楽大学を首席で卒業し、アルバム『リヴィング・ウィズアウト・フライデイ』でデビュー。『アピス』『レミニセンス』などのアルバムを発表。最新作は『サムシン・ブルー』(ユニバーサル ミュージック。)3曲の映像を収録したDVD付限定盤も同時リリース。8曲収録のアナログレコードも発売中(¥5,556+税)。9月26日(金)、27日(土)にはブルーノート東京で『サムシン・ブルー』のショーを行う予定。http://www.bluenote.co.jp/jp/
    山中千尋オフィシャルサイト http://www.chihiroyamanaka.com/
    山中千尋ツイッター https://twitter.com/ChihiroYamanaka

  • 取材・文:神舘和典

    1962年東京都出身。音楽を中心に書籍や雑誌のコラムを執筆。ミュージシャンのインタビューは年間約70本。コンサート取材は年間約80本。1998年~2000年はニューヨークを拠点にその当時生存したジャズミュージシャンをほぼインタビューした。『ジャズの鉄板50枚+α』『音楽ライターが、書けなかった話』(以上新潮新書)、『25人の偉大なジャズメンが語る名盤・名言・名演奏』(幻冬舎新書)、『上原ひろみ サマーレインの彼方』(幻冬舎文庫)など著書多数。

    新潮新書 http://www.shinchosha.co.jp/writer/1456/
    幻冬舎新書 http://www.gentosha.co.jp/book/b4920.html

撮影:萩庭桂太