本当にまさか賞をもらえるのが自分だとは思っていなかったのだろう。

 映像を見る限り、受賞した直後の彼女は、ただただ驚いて泣きじゃくり、「謝々」を繰り返した。

「今回、賞をいただいたのは本当に本当に幸運なことだと思っています。正直、どうして私がもらえたんだろうと、それくらい自分で驚いています。今まで台湾ではCMや雑誌にモデルとして出ることも多かったので、今回賞をいただいて、やっと一番やりたかった役者のスタートラインに立つことができました。その嬉しい思いと、これからがもっと大変で、もっと努力して自分を磨いていかなければという思いで、身が引き締まる思いです。これから役者として求められる仕事が増えることを望みますが、新たなものに挑戦することも続けていきたい。そんな中で、唯一無二の人になれたらと思います」

 台湾で、まだ頑張っていくのかと尋ねると、こう言った。

「台湾にひかれて、台湾に移り住んで今があるので、これからもアジアをつなぐような仕事ができたらと思います。でももし日本で機会をいただけたら、積極的に仕事をしたい。コメディー映画に出てみたりしたいですね」

 今後の仕事も、まだ発表はできないが、いろいろと進んでいるようだ。

 台湾でしっかりとポジションを築き、彼女が逆輸入される日が待ち遠しい。

 そしてそれはそう遠くない、と私は思う。

 蛇足ながら、ハギニワに受賞の瞬間の感想を尋ねた。

「花嫁の父、ってこんな感じかと思ったよ」

 この連載はやっぱり不思議である。

  • 出演:大久保麻梨子

    1984年9月7日長崎県生まれ。2003年にデビューし芸能活動を続ける中、2010年初めて一人3泊4日の旅行で訪れた台湾に一目惚れし、帰りの飛行機で台湾留学を決意。その半年後から台湾生活を始め中国語を習得し、仕事の拠点も台湾に移し現在、中華圏の広告、雑誌、ドラマなどで活躍中。夢は日本、台湾をつなぐ架け橋の様な人になること。
    オフィシャルブログ(最新情報)http://ameblo.jp/marilog0907/
    オフィシャルFacebook(日々更新中)http://goo.gl/OwRXt

  • 取材・文:森 綾

    1964年大阪生まれ。ラジオDJ、スポーツニッポン文化部記者、FM802編成部を経て、92年に上京、フリーランスに。雑誌、新聞を中心に発表した2000人以上のインタビュー歴をもち、構成したタレント本多数。自著には女性の生き方をテーマにしたものが多く『キティの涙』(集英社)、『マルイチ』(マガジンハウス)、『大阪の女はえらい』(光文社知恵の森文庫)、映画『音楽人』の原作など。
    ブログ『森綾のおとなあやや日記』 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

撮影:萩庭桂太