藤さんに、「めがねをどこで買えばいいですか?」と訊いてみた。似合うめがねをどうやって見つけるか、それが知りたい。

「自分に似合うめがね、好きなめがねが欲しいなら、努力してください。“そこそこ”でいいならともかく、納得できるめがねが欲しいなら、自分の足で探さないと無理です」

 やはり、安直な方法はないらしい。

「めがねを買うときに、一軒の店に行って、そこで買おうとしていませんか? でも、その店に欲しいめがねがあるとは限りませんよね。まず、どういうめがねが欲しいのか考えてみてください。医療器具として? デザイン? 価格? 何を求めているのか。それによって行く店が変わると思います」

 眼鏡店を何軒も回って見る人は少ないと思う。めんどくさいから、早く手に入れたいから、言い訳はいろいろある。だけど、手間を惜しんでは、似合うめがねは見つからないのだ。ほかのアイテムを買う場合を考えてみるとよくわかる。洋服、靴、時計、自転車……どんな物を買うにしても、インターネットで調べたり、いろいろな店で見比べたりしているはずだ。

 そもそも、どんなめがねが良いかわからない、という人はどうすればいい?

「めがねを楽しんでいる人に聞いたらどうでしょう? 好きなお店やめがねのブランドを教えてもらえるかもしれませんよ」

 そういえば、芳垣さん高良さんご夫妻も、ミュージシャン仲間からめがねに関する相談を受けることが多いとか。たしかにお二人とも、眼が悪いからめがねをかけている、というよりも、おしゃれのためのめがね、という印象だ。好きでめがねをかけている、だからカッコいいのだ。

 つまり、めがねが似合うカッコいい大人になるためには、めがねを好きになること。気に入っためがねが見つかれば、大切に使うだろうし、もしかしたら一生の付き合いになるかもしれない。

 自分に似合うめがねを真剣に探そう、と考え始めた人には藤さんの著書『めがねを買いに』を読むことをおすすめする。世界中のめがねのデザインや、たくさんの人たちのスタイリングが、きっとめがね選びの参考になるはずだ。

 インタビューが終わる頃には、藤さんの術中にはまって(?)めがねが気になり出してきた。どうやらほかのスタッフも同様のようで、撮影が終わった店内のあちこちで、カメラマンも、ヘアメイクも、ライターも、手当り次第にめがねをかけ始めたのだった。

  • 出演:藤 裕美

    1977年福岡県生まれ。眼鏡スタイリスト。10年間、眼鏡店で働きながら彫金技術を学び、ネジからすべてめがねを製作、個展も開く。2001年、24歳のときに店長としてショッププロデュース、買い付け、さまざまなイベントを企画。2007年、ドイツへ渡り、めがねブランド「FROST」に勤務。海外のめがねブランドのデザイナーや眼鏡店と交流を深め、他国のめがね文化を知る。帰国後、2009年から眼鏡スタイリストとして活動を開始。いとうせいこう氏との出会いにより、HP「眼鏡予報」をスタート。著名人のスタイリングや、誌面でのスタイリング、講演会、デザインアドバイスなど、めがねにまつわることを何でも手がける。また「KODOMO眼鏡プロジェクト」や、老人ホームでのボランティアなど活動の場をさらに広げている。
    8/31(土)23:00~「心ゆさぶれ!先輩 ROCK YOU」(日本テレビ系)に出演します。
    http://www.ntv.co.jp/rockyou/

    「眼鏡予報」 http://glasses-o-o-brille.com
    『めがねを買いに』(WAVE出版)定価1,680円
    http://www.wave-publishers.co.jp/np/isbn/9784872905373/

  • モデル:芳垣 安洋

    「ジャズ、ロック、ファンク、歌ものから民族音楽、現代音楽、即興まで……ジャンルを飛び越えてビートとメロディーを紡ぐ打楽器奏者!!!」
    兵庫県出身。関西学院大学在学中より関西のジャズエリアでキャリアをスタート、モダン・チョキチョキズに参加後上京。’90年代中期以降、渋さ知らズ、大友良英Ground Zero、ONJO、ROVO、DCPRGなどのジャズ~アヴァン・ポップを牽引したバンドのメンバーとして活動。渋谷 毅、山下洋輔、坂田明、菊地成孔、南博、長谷川きよし、おおはた雄一、カルメン・マキ、カヒミ・カリィ、UAなど様々なジャンルのミュージシャンと共演し、ライブやレコーディングに参加する他、大編成ジャズグループ「オルケスタ・リブレ」打楽器アンサンブル「オルケスタ・ナッジ!ナッジ!」など多様なグループを主宰している。欧米の音楽祭への出演や来日ミュージシャンとの共演も多く、海外では即興音楽家としての評価も高い。日本唯一の打楽器専門誌「リズム&ドラムマガジン」にコラムを連載中。また、文学座などの舞台演劇や映画の音楽制作にも数多く携わる。今年は話題の朝ドラのテーマや大河ドラマの劇中曲のドラム、パーカッションも演奏している。
    http://y-yoshigaki.com/

  • 取材・文:加藤いづみ

    コピーライター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。広告、SP、WEBのコピーライティング、企画のほか、1996年より某企業のPR冊子(月刊)制作を継続して手がけている。

ヘアメイク:茂手山貴子 http://moteyama.com/
撮影協力:リネット・ジュラ グラン http://www.jurajura.jp/shop/shop-grand.html
撮影:萩庭桂太