読者の中には、まだまだ老眼なんて先のこと、と思っている人は多いだろう。しかし、老眼は30代でも他人事ではない。そして40代では確実に老眼になるそうだ。

「眼の調整力が衰える速度には、あまり個人差がないといわれています。肌や筋肉などは鍛える方法がありますが、目の老化は防ぐことが難しい。だから40代になるとほぼ一斉に老眼になると思ってください」

 それにしても「老眼」という言葉は響きが悪い。しかし、今のところ代わる言葉がないので、加齢による視力の衰えを「老眼」と呼ばざるを得ない。

「日本人は近視タイプの人が多く、老眼鏡にすごく抵抗があるようです。『私は近視だからまだ老眼になっていない』といいながら、めがねを下げて(あるいは上げて)書類に顔をくっつけて読んでいる姿、よく見かけますよね」

 遠視の場合は30代から、近くが見えにくく感じる遠視の症状が出始める。「みんなより早く老眼になった」と劣等感を抱く人も多いらしい。筆者自身も遠視タイプだ。眼精疲労になりやすく、30代で裸眼のパソコン作業がつらくなった。

 老眼になる前に何をすべきか。眼鏡スタイリスト藤裕美さんの提案は……。

「30代からファッションの一部としてめがねを取り入れることをおすすめします。普段から伊達めがねをかけて、めがねに慣れておけばいいんです。早いうちからめがねをかけていれば、周りも見慣れるから洗脳できるじゃないですか(笑)。最初は素通しレンズで、眼が悪くなったら度が入ったレンズに替える。これなら気付かれません。何より、自分自身もめがねに慣れることができます」

 老眼鏡をかけたくないからといって、ろくに見えていないのにやせ我慢をしている人は多い。そうしているうちに、肩こりや頭痛など、身体に負担がかかるようになってしまうのだ。とくに外見を気にする人は老眼鏡を敬遠しがちだ。だからといって眉間にしわができてしまっては、本末転倒ではないか。

「めがね男子を好きな女性は多いので、早いうちからめがねをかけた方がモテるかもしれませんよ。女性の場合は、おしゃれなめがねを持っていれば、メイクの時間がないときにはスッピンでもだいじょうぶです!(笑)」

 30代のうちから似合うめがねを見つけておけば、心強い。ところで今回のモデルを務めた巽さんと藤さんは、プライベートでも親しい間柄。巽さんの人柄を知っているからこそ、その魅力を引き出すスタイリングができるのだろう。

 ところで、今この記事を読んでいるあなたには、ハッキリと文字が読めているだろうか。「スマホは字が小さいから」「今は目が疲れているから」と言い訳している人は、めがねを買う前に行くべきところがあるようだ。

  • 出演:藤 裕美

    1977年福岡県生まれ。眼鏡スタイリスト。10年間、眼鏡店で働きながら彫金技術を学び、ネジからすべてめがねを製作、個展も開く。2001年、24歳のときに店長としてショッププロデュース、買い付け、さまざまなイベントを企画。2007年、ドイツへ渡り、めがねブランド「FROST」に勤務。海外のめがねブランドのデザイナーや眼鏡店と交流を深め、他国のめがね文化を知る。帰国後、2009年から眼鏡スタイリストとして活動を開始。いとうせいこう氏との出会いにより、HP「眼鏡予報」をスタート。著名人のスタイリングや、誌面でのスタイリング、講演会、デザインアドバイスなど、めがねにまつわることを何でも手がける。また「KODOMO眼鏡プロジェクト」や、老人ホームでのボランティアなど活動の場をさらに広げている。
    8/31(土)23:00~「心ゆさぶれ!先輩 ROCK YOU」(日本テレビ系)に出演します。
    http://www.ntv.co.jp/rockyou/

    「眼鏡予報」 http://glasses-o-o-brille.com
    『めがねを買いに』(WAVE出版)定価1,680円
    http://www.wave-publishers.co.jp/np/isbn/9784872905373/

  • モデル:巽よしこ

    Blog http://ameblo.jp/hareamekumoridesu/
    Ω Orante http://yoshikotatsumi.tumblr.com/

  • 取材・文:加藤いづみ

    コピーライター。東京都出身。成城大学文芸学部卒。広告、SP、WEBのコピーライティング、企画のほか、1996年より某企業のPR冊子(月刊)制作を継続して手がけている。

ヘアメイク:茂手山貴子 http://moteyama.com/
撮影:萩庭桂太