5月19日。術後1カ月。病を克服した藤森香衣さんは、ホノルルトライアスロンの5kmランに挑戦した。ジャスト・ギヴィング・ジャパンを通じてチャリティーを募り、日本対がん協会に寄付するためである。

「日に日に体力は回復してくれました。ホノルルに行かなきゃ、という目標があったので、リハビリも頑張れました。サボると本当に腕が上がらなくなるんですよ。可動域って『ここまで』と思うと本当にそこで止まっちゃう。だからちょっと痛いくらいのところまで頑張らなきゃいけない。チャリティーのことはもちろん、私は乳がんになっても、術後は何かやれますよ、とまず体験者に呼びかけたい思いもありました」

 歩きながらも完走した。ハワイの晴れ上がった空は、彼女にいっそうの元気をくれた。

 香衣さんはこれからも乳がんを体験した人には「やれます」という言葉を、その周囲の人たちには「静かに見守ってあげてほしい」という言葉を。そして、一般の人たちには「検診を受けてほしい」と呼びかけたいと言う。

「患者の気持ち、周りの人の立場。私は友達のこともあり、両面からわかったことがあるので、どちらにも訴えかけていきたい。哀しい思いをする人を一人でも減らしたい。『あの人、乳がんを克服した人だよね。ピンクリボン月間になると必ず出てくるね』と言われたいですね」

 モデル、タレントの仕事にもすぐに復帰した。

「今までと同じ仕事をすることが、一番大切です」

 ここ2年くらいのすべてのことが、彼女の今の笑顔の裏側にある。「サバイバー」と言われる友達が増えていくのは、本当に嬉しい。

  • 出演:藤森香衣

    モデル。1976年東京都生まれ。11歳からモデルを始め、広告、CM、テレビを中心に活動。CM出演は70本を超える。テンカラット・プリューム所属。
    http://tencarat-plume.jp/models/details/hujimorikae.shtml
    藤森香衣オフィシャルブログ「白花の薫り」
    http://ameblo.jp/kae-fujimori/day-20130404.html

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

衣装協力:adidas Japan
協力:長野ハル
撮影:萩庭桂太