術前、4月4日に病気のことはブログで公表した。

 すると困ったことが起こった。知人友人、善意からの様々な情報が殺到したのである。

「ある人にこれから貴女にかかる負担を言います、と言われたんですね。『いい病院を紹介する』『ガンにいい食品を紹介する』『宗教を紹介する』『見当違いな治療法を紹介する』ということが起こります、と。まさにその通りでしたね。良かれと思ってのことだけに、大変。周囲の動揺をどう抑えるか、は、世の中の患者さんすべてが悩んでいることだと思います」

 香衣さんは自分の病気についての正しい理解を求め、また元気になった自分を公にするべく、5月8日に親しい友人たちを集めて「Dear……」と名付けたパーティーを開いた。

 この取材を進めていた私も、呼んでいただいた。

 正直、私は少し気が重かった。大病の説明を聴くパーティーというのはいかがなものか。暗い場になりはしないのか。そこでどう振る舞えばよいのか。

 しかし集まったお友達の顔を見ていると、彼女たちや彼らがいかに彼女を心配し、元気な彼女の顔を見られるのを待っていたのかということがよくわかった。小さなパーティー、とは聞いていたが、60数名の人たちが集まっていた。

 たくさんの仲間のモデルさんたちも駆けつけ、場は何事かと思えるほどに華やかで、楽しげな空気が漂っていた。

「元気な姿を一度に見ていただいたほうがいいと思い、このパーティーを主宰しました。お花なんかつけていますが、披露宴ではありません(笑)……」

 そんな冗談を言いながら、彼女は気丈に明るく病気を説明し、感謝を表した。そこにいる人たち一人ひとりに、病気について正しく話すのも大変な労力だ。明るい場で、一回で話してしまえるというのは、なかなかいいアイデアだ。パーティーが進むほどに、私はそう実感するようになっていた。

 経過報告の後、香衣さんは、新たなチャレンジを発表した。

「今月、ホノルルでの5kmランに挑戦し、募金を募って日本対がん協会へ寄付したいと思っています」

 それは表に立つ仕事をしている彼女が、自分の病気を世の中のために活かそうという、強い志だった。

  • 出演:藤森香衣

    モデル。1976年東京都生まれ。11歳からモデルを始め、広告、CM、テレビを中心に活動。CM出演は70本を超える。テンカラット・プリューム所属。
    http://tencarat-plume.jp/models/details/hujimorikae.shtml
    藤森香衣オフィシャルブログ「白花の薫り」
    http://ameblo.jp/kae-fujimori/day-20130404.html

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

ヘアメイク:茂手山貴子
撮影:萩庭桂太