昨年11月『アンフィルム』という初めてのフルアルバムを出した。その前後から、アーティストとして様々な進展があった。

「16年前にゲーム『鉄拳2』のテーマソングを歌ったのですが、スタッフの方がまた今回『鉄拳タッグトーナメント2』で新たに歌ってほしいと言ってくださったんです」

 どうやらゲームをクリアしたときに、エンドロールと一緒にその曲が流れてくるのだという。『鉄拳』ファンにとってはクリアの甘美な心境とこの曲がばっちりシンクロしたらしい。彼女に改めてレコーディングを依頼したバンダイナムコの原田勝弘プロデューサーは喜んで撮影にも協力してくださった。

 一方でライブも今年は新しい試みが始まった。拝郷メイコ、ヒメノアキラという2人の同世代女性シンガーと3人で、隔月定期的なイベントを開催しているのだ。

「3人のライブは渋谷7th FLOORで偶数月にやっています。次は2月9日。4月からは尊敬する女性アーティストを招いて、最終的には12月15日に0-westで全員が集まる大きなフェスを開く予定なんです。4月のライブには遠藤響子さんが来てくださることになっています」

 それも自分たちの手作りだ。

「音楽を始めて嫌な思いをしたことがないんです。音楽をやめてしまう人は音楽以外のことで嫌な思いをするのだというけれど、私は自分が発信してやりたいことをやっているので。強制されることは何もないから。ただ集客などの数字が上がると周囲に迷惑をかけないんだけどなとは思います。いつか大きなホールでやってみたい。森山良子さんみたいに60歳過ぎても新鮮に歌える人になりたいです」

 30代半ばの彼女が、年を重ねてなお新鮮、ということと向き合っていくのはきっとこれからだと思う。けれどもまた彼女なら、ふわりと乗り越えていくような気もする。

  • 出演:しらいしりょうこ

    東京生まれ。’01年からシンガーソングライターとしてライブ活動を開始。05年、ミニアルバム「Assembling」でインディーズ・デビュー。08年にセルフレーベルChiffon Records設立。昨年11月、4年ぶり、初のフルアルバムとなる「アンフィルム」をリリース。Coccoの「強く儚い者たち」などの作品を手がけた柴草玲との共作を始め、彼女ならではの世界観を作っている。
    http://www.shiraishiryoko.com/

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

  • ヘアメイク:西田裕美子

    数店舗の美容室で経験を積んだ後2002年にヘアメイクに転向、ヘアメイク事務所Deuceに所属。やさしい人柄であたたかく誠実な仕事ぶりには定評がある。女性らしく明るい、透明感のあるメイクが得意。現在CDジャケット、PV、TVやショーを中心に活躍中。

撮影協力:株式会社バンダイナムコ
撮影:萩庭桂太