しらいしりょうこさんは16歳のとき、某大手プロダクションのオーディションに受かった。

「もちろん音楽をやりたかったんですけど、決まる仕事は女優だったりタレントだったりしたんです。雑誌のインタビューを受けて『将来の夢は』と聴かれ『東京ドームでコンサートをすることです』と答えてしまい、全然路線が違うだろうとマネージャーさんに叱られたりしました」

 やがて高校を卒業し「一芸一能」試験で亜細亜大学に通い始めたものの、事務所からはクビを宣告されてしまう。

「売れなかったから、しょうがないですよね。『鉄拳2』のテーマソングを歌ったのが最後の方でした。ちょうどその頃、2年くらい付き合った人との大失恋も経験しました。彼と別れるのと事務所を辞めるのは同時くらい。つらくてつらくて、その思いを歌にし始めたんです」

 周囲からも「20歳を過ぎてまだ音楽をやりたいなら、シンガーソングライターをやるしかないよ」と言われていた。

「でもその時の歌って『私はつらい。きっとずっと好きだけど無理なんだよね』みたいなひとりよがりで、みんなに届くようなものじゃなかった。2年くらいは怖くて人前では歌えなかったですね。ただどんどん曲がたまっていくし、みんなどう思うかな、と聴いてもらいたくなったんです」

 初めて、ピアノで弾き語りしてライブをやった。それが好評で、少しずつライブは増えていった。

「全部自分でやろうと思ったんです。ライブもできたんだから、レコーディングもしてみようと」

 彼女は意を決して、たった1人でアルバムを作り始めた。

  • 出演:しらいしりょうこ

    東京生まれ。’01年からシンガーソングライターとしてライブ活動を開始。05年、ミニアルバム「Assembling」でインディーズ・デビュー。08年にセルフレーベルChiffon Records設立。昨年11月、4年ぶり、初のフルアルバムとなる「アンフィルム」をリリース。Coccoの「強く儚い者たち」などの作品を手がけた柴草玲との共作を始め、彼女ならではの世界観を作っている。
    http://www.shiraishiryoko.com/

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

  • ヘアメイク:西田裕美子

    数店舗の美容室で経験を積んだ後2002年にヘアメイクに転向、ヘアメイク事務所Deuceに所属。やさしい人柄であたたかく誠実な仕事ぶりには定評がある。女性らしく明るい、透明感のあるメイクが得意。現在CDジャケット、PV、TVやショーを中心に活躍中。

撮影:萩庭桂太