レコーディングするためのスタジオを押さえること。ミュージシャンにお願いすること。

「制作、宣伝、権利関係。全部自分でやりました。個人でも。入会金を25000円払って、戸籍謄本、印鑑証明書を提出して。作品利用申告書というのがあるのですが、それはいくつか条件があって、そのうち一つに該当すれば大丈夫だったと思います。私の場合はFMで3曲以上オンエアされたことがあるというところに該当したので、NACK5のディレクターに証明書をいただいたりもしました。iTunesに登録するときに必要なISRCコードというのをとるのにも、住民票の写し原本などが必要でした。世界中どこからでもそれさえあれば認識できるらしいんですが、いろいろと慣れなくて大変でした」

 面倒くさいことを、ひとつずつクリアしていった。制作費用は音楽で稼いだお金。それを全部また音楽に使い果たすのだ。ジャケットの写真は、どうしても頼みたい人がいた。

「それが萩庭桂太さん。16歳のときに撮ってもらった写真がすごく気に入っていて、どうしてもこの人の写真でないとと思って、事務所の電話番号を調べて、お電話したんです」

 萩庭は格安で彼女のオファーを受けた。かつて撮ったことを覚えていたこと、彼女が必死になって語って聞かせたこれからやろうとしていることに感銘したのだそうだ。

「それで7年前、しらいしりょうことしてCDデビューできました。全国のイベンターが集まってつくったレーベルから出せて、去年は大阪、名古屋、広島、盛岡、仙台、金沢、東京と、ツアーでライブをやりました」

 金沢でのライブが特に印象に残っている。

「40年続いている『もっきりや』という老舗の音楽喫茶があって、店主がとても音楽を大事にしている方で、そこでのライブがすごく気持ちがよかったです。皆さん、一緒に大きな声で歌ってくださったり。長く続いている空間はやっぱり違いますね」

 イベンターや会場にかけあうのも、全部自分の仕事だ。

「がんばらなきゃいけないことはいっぱいあるけど、ストレスはないですよ」

 頑張り屋さんが、一瞬ふわっと笑顔になった。

  • 出演:しらいしりょうこ

    東京生まれ。’01年からシンガーソングライターとしてライブ活動を開始。05年、ミニアルバム「Assembling」でインディーズ・デビュー。08年にセルフレーベルChiffon Records設立。昨年11月、4年ぶり、初のフルアルバムとなる「アンフィルム」をリリース。Coccoの「強く儚い者たち」などの作品を手がけた柴草玲との共作を始め、彼女ならではの世界観を作っている。
    http://www.shiraishiryoko.com/

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

  • ヘアメイク:西田裕美子

    数店舗の美容室で経験を積んだ後2002年にヘアメイクに転向、ヘアメイク事務所Deuceに所属。やさしい人柄であたたかく誠実な仕事ぶりには定評がある。女性らしく明るい、透明感のあるメイクが得意。現在CDジャケット、PV、TVやショーを中心に活躍中。

撮影協力:カワイ表参道コンサートサロン パウゼ http://shop.kawai.co.jp/omotesando/
撮影:萩庭桂太