今は全国にしらいしりょうこを待ってくれるファンが増えつつある。彼女はどうやって、みんなに届く歌を作れるようになったのだろうか。

「2枚目のミニアルバムに入っている『はじまりのキス』という曲があるんですね。その曲にけっこう反響があって、RADIO BERRYというFMラジオにゲストで出させてもらったとき、リスナーからこんなメールをいただいたんです」

 メールには、哀しい恋愛をしていたそのリスナーが『はじまりのキス』を聴いて「このままではいけない」と気持ちを切り替え、新たな恋を見つけて結婚。今は子どももいて幸せだというようなストーリーが書かれていた。

「今幸せなのはしらいしさんのおかげです、と書いてあって、びっくりしたんですよ。それから、誰かにとって一生残る曲を書きたい、と本気で思うようになりました」

 詞や曲を書く時の気持ちはずっと変わらない。

「いつもたった1人のためを思って作るんです。それが結果的に他の人の思い出にリンクすると思う」

 今大好きな人。去っていった恋人。どこか安定していない関係性が歌ににじむ。

「届きそうで届かない気持ちからしか、歌は出て来ないのかもしれません。幸せが溢れ出て止まらない、みたいな歌って私はできないのかも。だから実際には幸せであったとしても『届きそうで届かない』みたいな思いを持ち続けていたいですね」

 昔、歌うきっかけになった男性のことを「今までで一番CRAZYな人」だと言った彼女の顔がとても印象的だった。そういう人に出会えて幸せだよ、と言おうと思ったけれど、止めた。

  • 出演:しらいしりょうこ

    東京生まれ。’01年からシンガーソングライターとしてライブ活動を開始。05年、ミニアルバム「Assembling」でインディーズ・デビュー。08年にセルフレーベルChiffon Records設立。昨年11月、4年ぶり、初のフルアルバムとなる「アンフィルム」をリリース。Coccoの「強く儚い者たち」などの作品を手がけた柴草玲との共作を始め、彼女ならではの世界観を作っている。
    http://www.shiraishiryoko.com/

  • 取材・文:森 綾

    大阪市生まれ。スポニチ大阪文化部記者、FM802開局時の編成部員を経て、92年に上京後、現在に至るまで1500人以上の有名人のインタビューを手がける。自著には『マルイチ』(マガジンハウス)、『キティの涙』(集英社)(台湾版は『KITTY的眼涙』布克文化)など、女性の生き方についてのノンフィクション、エッセイが多い。タレント本のプロデュースも多く、ゲッターズ飯田の『ボーダーを着る女は95%モテない』『チョココロネが好きな女は95%エロい』(マガジンハウス)がヒット中。
    ブログ「森綾のおとなあやや日記」 http://blogs.yahoo.co.jp/dtjwy810

  • ヘアメイク:西田裕美子

    数店舗の美容室で経験を積んだ後2002年にヘアメイクに転向、ヘアメイク事務所Deuceに所属。やさしい人柄であたたかく誠実な仕事ぶりには定評がある。女性らしく明るい、透明感のあるメイクが得意。現在CDジャケット、PV、TVやショーを中心に活躍中。

撮影:萩庭桂太